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「ザ・マッチ」がもたらしてくれたもの【舩越園子コラム】

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ゴルフ情報ALBA.Net

タイガー・ウッズとフィル・ミケルソン(ともに米国)がNFLのビッグスターとペアを組んで対決した「ザ・マッチ・チャンピオンズ・フォー・チャリティ」は、生憎の雨に降られたが、メダリストGCで展開された18ホールのマッチは見どころ満載だった。 昔と今はどう違う? タイガーのスイングを比べてみた【連続写真】 ウッズとペアを組んだのはペイトン・マニング、ミケルソンの相棒はトム・ブレイディだった。ミケルソンとブレイディはウエアを黒で統一。対するウッズはウッズらしくサンデー・レッドシャツに身を包んで登場した。それならばマニングはウッズに合わせて赤いシャツだろうと思ったら、赤ではなく、赤っぽいピンク色。その微妙な食い違いとアバウトさが、いかにもアメリカンで思わず苦笑させられた。 少々驚かされたのは、ミケルソンがとても緊張している様子で、序盤はほとんど口も利いていなかったことだ。 「フロントナインは、とてもナーバスだった」 ウッズはメジャー15勝、通算82勝。ミケルソンはメジャー5勝、通算44勝。ウッズの相棒マニングはハンディキャップ6.4。ミケルソンの相棒ブレイディのハンディキャップは8.1。すべての数字は「ウッズ&マニング勝利」を示しており、そんな下馬評を覆そうと大会前から力んでいたミケルソンは、だからこそ序盤は緊張していたのだと思う。 3番でウッズ組がアップを先行。前半だけで2アップ、3アップと差が開いていった。 だが、フォーボールから変則オルタネート方式に変わった後半はミケルソンとブレイディが見事なチームワークで2つ取り返し、最終18番へ。 「よーし、ラストホールを取れば、プレーオフに持ち込めるぞ」 ミケルソンがブレイディに掛けたこの言葉は究極のポジティブ・シンキング。ようやくミケルソンらしさが発揮された。 とはいえ、勝利したのはウッズ&マニング。獲得賞金2000万ドルはコロナ禍の緊急支援金として医療従事者などの救済ファンドへ寄付された。ドラコンやニアピン、さらにはマッチの途中でブルックス・ケプカ(米国)らによる寄付のサプライズ参加もあり、チャリティ・マッチとしては大成功だったが、勝敗の行方や寄付の金額以外にも、このマッチがもたらしたものは多々あった。 コロナ禍、そしてコロナ後に、どうやってゴルフをするのか、どんなふうにマッチが行なわれるのかという興味関心は、コロナ以前には存在しなかった新しい注目ポイントだった。 4人のプレーヤーは1人ずつ乗用カートに乗り、キャディは付けず、セルフプレー。ペアどうしと言えども常にソーシャル・ディスタンスを意識し、握手もハグもハイファイブも禁止。だが、彼らは空中でハイファイブの真似をする「ニュー・ハイファイブ」を自ずと行ない、彼らなりに楽しんでいた。そんな様子を目にすれば、「案ずるより産むが易し」と思えてきた。 ゴルフ界とNFL界のビッグスター4人が集結するとはいえ、無観客マッチは果たして盛り上がるのか、楽しめるのかという不安や心配はあるにはあった。だが、コース上でインタビューに応えていたウッズが、それを途中で「エクスキューズ・ミー。相棒を助けなきゃ」と遮り、パットに臨もうとしていたマニングの下へ駆け寄っていった姿からは、ウッズの熱意と戦意が伝わってきた。 ミケルソンの過度の緊張ぶり。マニングやブレイディがアドバイスに素直に頷く様子。アップを奪ったときのうれしそうな表情。 誰かの笑顔を見れば、ハッピーな気持ちになる。ゴルフを楽しんでいる彼らを見た視聴者も、きっと楽しい気持ちになったのではないか。 そして、専門外のフィールドに挑戦したNFLの2人の勇気も素晴らしかった。 「トムとペイトンに脱帽だ。僕ら(ゴルファー)が彼ら(アメフト)に挑戦することは考えられないからね」(ウッズ) それが、このマッチがもたらした最大の意義だったのだと私は思う。 一昨日、トランプ大統領もコロナ禍で初めてのゴルフを楽しみ、世の中はゴルフがある日常へ少しずつ戻りつつある。その日常は、以前とは異なる「ニュー・ノーマル」だが、それに慣れて進んでいくしかない。 「グレートな一日だった」 ウッズも満足げに頷いたこの「ザ・マッチ」は、ゴルフの「ニュー・ノーマル」の良き手本になったのではないだろうか。 文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト) (撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>

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