元オウム菊地直子被告が無罪確定なら犯人蔵匿で有罪の同居人はどうなる?
オウム真理教による1995年5月の東京都庁郵便物爆発事件で、爆薬の原料を運んだとして殺人未遂等幇助(ほうじょ)罪に問われた菊地直子被告に対し、東京高裁(第二審)は先月27日、一審の有罪判決を覆して無罪を言い渡しました。検察側は今月9日に上告しましたが、上告棄却となった場合は無罪が確定します。この場合、菊地被告をかくまったとして有罪判決が下された高橋寛人元被告の罪の扱いはいったいどうなるでしょうか? 【写真】<地下鉄サリン20年>オウムの本質はサリン事件の頃と「変わらない」
高裁の無罪判決が破棄される可能性は?
菊地被告の起訴内容は、「山梨県内の教団施設から都内のアジトに爆薬の原料となる薬品を運び、爆発物の製造を手助けした」というものです。元教団幹部らが薬品から小包爆弾を製造して都庁に郵送。知事秘書室で爆発させ、都庁職員が重傷を負いました。報道などによると、裁判の焦点は「菊地被告が、爆発物の製造をすると知りながら、その原料となる薬品を運んだかどうか」にあるようです。この認識に対して、井上嘉浩死刑囚は「テロの計画を菊地被告は理解していると思った」などと証言していますが、一審と二審の判決の違いは、この井上証言の評価が分かれた結果と見る向きが多いのです。 元検察官で若狭・高橋法律事務所の坂根義範弁護士はまず今回の判決について、「判決書を見ておらず、詳しい証拠関係を知っている訳ではないので、一審二審それぞれの判決に対し、妥当不当といえる立場ではありません。しかし、両方ありうる判決であったと思います」と感想を述べています。そのうえで、上告については「今後、検察が提出する上告趣意書を見なければ判断できないが、二審(高裁)判決が破棄される可能性は『五分五分だ』」といいます 坂根弁護士は「報道によると、井上死刑囚の証言の信用性がかなり焦点になっているようです。井上証言、つまりこの証拠の評価が一審と二審で分かれた結果が判決に影響しました。証拠から導かれる『菊地被告人の認識』という事実認定に関して、重大な事実誤認があったといえるかどうかが鍵ですね」と指摘します。そのうえで、二審(高裁)判決破棄の可能性については、「二審判決の無罪理由を導く論理性や経験則などが、明らかにおかしいと言うに値する、説得力のある上告理由が書けたかにかかっています」と話しました。