ex JAYWALK 中村耕一「諦めない。事件を起こした僕が諦めてしまったら元も子もなかった」
だけど、諦めない
──含蓄がある言葉です。 中村 最近、僕は児童養護施設にお手伝いで行くことがあるんです。そこで何を伝えたいかというと、「敵ばかりじゃない。否定する人間ばかりじゃない。1人かもしれないし2人かもしれないけど、必ず味方になってくれる人はいるんだよ」ってこと。「あなたのことをちゃんと見守ってくれている人も世の中に絶対いるんだから」って……。 ──親ガチャなどという言葉もはびこる中、日本は格差がどんどん広がっています。立ち上がる気力もない人たちも大勢いると思うんですよね。 中村 「諦めるな」「悲観するな」とか口では言ったところで、実際は叶わない夢だっていっぱいあるじゃないですか。僕だってそうです。ずっと音楽をやりながら、いろんな夢を見てきたけど、叶わなかった夢のほうが多かった気もするんですね。だけど、諦めない。あるいはなにかを諦めたとしても、別のことは諦めないで踏ん張る。「これはもうダメだ」って自分で認めない。 ──最後は意志力が大事ということになる? 中村 もちろん僕がこんなことを口にしたところで、「綺麗事ばかり言いやがって」という意見も出るでしょう。でも、諦めないことが次に繋がるのも事実なんですよ。閉じちゃったら、そこで終わりですから。それは本当に僕自身の経験として声を大にして言いたい。僕も事件を起こして最初は路頭に迷い、周りの方たちに大いに助けられましたが、そこで肝心の僕が諦めてしまったら元も子もなかったでしょうから。 日比 映画の中で、中村さんが住んでいるアパートが頻繁に登場しますが、これは一種のメタファーです。そのアパートには、LGBTQの方、片親で複雑な家庭環境を持つ女性(主人公)のような人、身体障害者、生活に困っている高齢者、そして男性(主人公)のように過去に不祥事を起こした人などが住んでいます。住民たちは、いずれも何らかの形で社会的に疎外された存在として描かれています。作中には「ここは負けた人間が集まるアパートだ」というセリフもあるくらいです。 ──ただ、弱者が頑張る姿を見ることで鼓舞される観客もいるはずです。 日比 だからこそ、あのアパートで『BEGINNING』という曲を歌うことが重要でした。みんなにとって“はじまりの日”になるんだという意味で。 ──最後に映画公開にあたってメッセージをお願いします。 中村 先ほど話が出たように、たしかに今の時代は夢すら見ることができない人が大勢いると思います。あきらめたくないことはあきらめない。叶わないこともたくさんあるけれど叶うことだってあるんだということを感じてもらえたらと思います。 日比 1歩踏み出す勇気が、未来を変える最初の音となる…… そのわずかな歩みが、やがて旋律となり、それぞれのストーリーを奏でる…… この作品を、多くの人に観ていただき、その勇気や希望が広がっていくことを願っています。 【前編】ex JAYWALK 中村耕一、覚醒剤取締法違反は「僕自身が一生背負っていかなくてはいけない問題」は下の関連記事からご覧ください。
小野田 衛