博士課程の学生に最大290万円…厳しい経済状況に置かれる若手研究者の支援、どうあるべき?
21日に閣議決定された第三次補正予算案に組み込まれた博士号取得を目指す若手研究者への支援策が話題を呼んでいる。 【映像】52%が無給で生活苦...諦めざるを得ない学生も 現在およそ7万5000人いるとされる博士課程の学生。実は、その半分以上が無給で、生活に必要とされる年180万円の収入を得られているのは、わずか10%だ。こうした厳しい経済状況、学位取得後のキャリアへの不安から、“研究者離れ・博士離れ”が進んでいるという。
今回の支援策では、約6000人に年間最大で290万円を支給するプランが盛り込まれており、文科省では「博士を目指す学生の皆さんへ。これから我が国を背負って立つ皆さんが、経済的な不安を抱えずに安心して博士課程へ進学できるよう、これまで以上に強力に博士課程の学生の皆さんを支えてまいります」としている。
■「研究に充てられる時間が増えるのはいいことだ」
慶應義塾大学総合政策学部の中室牧子教授(教育経済学)は「博士課程の学生さんのほとんどがアルバイトや大学のリサーチアシスタントなどによって生活費を稼いでいる状態だ。やはり学業、研究に専念していただくために、一部の方であっても、その助けになればと思う。私は非常にポジティブに受け止めている」と話す。
「研究者にとって最もレバレッジが効かない重要なリソースは時間だ。それが研究以外のことに割かれてしまえば、生産性が落ちることになる。素晴らしい成果が出るのは若い時のものが多いという研究もあるくらいだ。今回の支援によって研究に充てられる時間が増えるのはいいことだと思う。また、アメリカなど、海外の大学院の教育はずいぶん事情が違っている。日本の国立大学の学費は年間80万円くらいだが、アメリカのトップスクール(私立)は300~500万円くらいかかる。それでも生活費や学費を払っている人は、ほぼゼロだと思う。なぜなら大学から学費や生活費の支援があるからだ。その意味では、日本の最優秀層がどんどん海外へ出ていってしまうという心配もあったと思う」。