フォーマルの最上格「黒留袖の着物」とは?ポイント、柄、帯…今さら聞けない選び方をプロが解説
既婚女性の礼装・黒留袖の選び方のヒントとポイントを、髙島屋呉服部が答えます。
ハレの日にまとうフォーマルな着物において、格調が高いものには、振袖、留袖(黒留袖・色留袖)、訪問着が代表的なものになります。この3種類の着物は、柄が絵画のように上下(天地)があり、それぞれ生地が縫い合わされる部分で模様が繋がるようにデザインされています。その柄の付け方を、一般的には「絵羽模様」と呼びます。 このうち、黒留袖は地色が黒で、「身頃(みごろ)」と呼ばれる部分の下半身に柄が配され、上半身(肩、胸、袖)部分には柄がなく、五ツ紋を入れてお召しになる着物のことです。 これは、既婚女性の第一礼装として、主に結婚式で新郎新婦のお母様をはじめ近親の方がお召しになるものとされています。同じような柄付けで地色が黒ではないものを「色留袖」と呼び、招待を受ける式典や大切な式での主格となられる際など、結婚式と同じような格式の高い場面での正装になります。 <写真>既婚女性の第一礼装である黒留袖。五ツ紋を入れ、比翼を付け、帯は金銀糸を使った袋帯、小物は白金で合わせるのが基本的な着こなしです。
大切な場面で着る黒留袖の選び方
黒留袖の柄(デザイン)は、ほとんどが「吉祥模様」と呼ばれる縁起のよいものが描かれていると思います。デザインやバランスが似合うことも大切ですが、模様にこめられた意味を理解し、納得されたものをお召しになることは、大切な場面で列席される際のご自身の安心感にもつながります。 例えば、扇…扇子の地紙部分にあたる「扇面」や、貴族が用いたとされる華やかな「檜扇(ひおうぎ)」は、黒留袖によく使われる柄です。扇が末広がりを意味することは、末永い発展や豊かさを願う気持ちを扇の柄にこめたもので、ご家族・ご親族として新郎新婦様へのお気持ちの表現につながると言えます。 <写真>末広がりの意味をもつ檜扇に、鶴や松竹梅、宝尽くしなどのさまざまな吉祥模様を詰めた黒留袖の裾模様。まさに結婚式などの場にふさわしい、寿ぎの装いです。