《連載:ウガンダ支援の現在地》(5) 茨城新聞記者ルポ 絶滅危惧種 止まらぬ密猟 経済と自然 探るバランス
動画には、灰色の体に鮮やかな赤い尾羽、丸みを帯びたくちばしが特徴のコンゴヨウムが映し出された。密猟者に捕まり傷ついた100羽の治療が終わり、自然に帰す日が来た。ケージの中と外を行き来しながら、外の世界におっかなびっくりな様子。1羽が森に向かって飛び出すと、一斉に飛び立って行った。 ■動画 放鳥は、ウガンダ野生生物保全教育センター(UWEC)などが行った。UWECは密猟で傷ついた動物の保護などを行っている。ヨウムは、2年前に現地当局などが密輸業者を摘発した際、押収された生き残り。「飛び立つ姿に感動した。元気に野生に帰ってねと願いながら見送った」。その放鳥の現場にいた鎌田朱美さんは、UWECのヨウム保全センターを訪問した茨城県の教員らに動画を見せ、当時の様子を語った。 日本の支援を受け、同国で絶滅危惧種のヨウム保全が進む。国際協力機構(JICA)の協力事業。中部大(愛知県)の牛田一成教授(69)=生物学=らがUWECと協力。鎌田さんは研究者と住民との調整を担っている。 ■貧困 ヨウムは先進国でペット人気が高い。アフリカでも国や地域によっては食用で、赤い尾羽を儀式に使うこともある。度重なる乱獲や森林開発で、ヨウムの個体数が激減。2016年に野生個体の商取引が禁止になった以降も密猟が止まらず、近隣のコンゴやカメルーンではほぼ絶滅した。 重罪になると分かっても、密猟は止まらない。鎌田さんは「貧困から手を染めてしまうようだ」と話す。 「保全に経済的な動機付けが必要。守ることで生活の向上に役立つと示さないと進まない」と牛田教授。ビクトリア湖周辺でヨウムを中心とした野鳥の観察ツアーを作成中だ。船で回るコースで、地元の漁民が先導する。雇用を生み出し、地元経済の活性を図る。周辺の村を回り、こぎ手として若者らを約30人集めた。ガイド用の研修会も開く。 ■教育 牛田教授は「何より保全の重要性を自ら理解していくことが重要」と訴える。動物の保全教育も行うUWECが鍵を握る。ウガンダで不吉だとして殺されがちなフクロウやヘビも、UWECの職員が来園した子どもたちに生態系での役割などを解説すると、帰る頃には大人気に変わるという。 開発が進み暮らしが便利になる裏側で、さまざまな動植物が失われている。「公害で人が死んでも止まらないくらい、豊かになりたいと願っているのも実情」と牛田教授。経済発展と自然保護との落としどころを見つけるのが大切という。 (おわり)
茨城新聞社