同人誌の文化を支える「印刷所」、ある作家が印刷を「全部断られて」たどり着いた道とは
吉本さんと国里さんは異口同音に、「貴重な証言者が高齢でどんどん減っている」と心配する。「同人誌学」が真の意味で成立するとしたら、ここ数年が最後のチャンスかもしれない。
競争より助け合い
1993年、業界の安定的発展を目的とする「日本同人誌印刷業組合」が発足した。現在の加盟は20社。内田さんが理事長を務めている。組合HPによると、現在の同人誌市場は「800億円超」とのことだ。
能登半島地震の時、納品不能になった「スズトウシャドウ印刷」への支援を各社に呼びかけたのは内田さんだった。「コロナの時期もお互い大変だったし、当然のこと。ウチは規模では中堅ですが、業界のリーダーになれるよう頑張りたい」。同人文化の中核にあるのは、競争よりも、助け合いの精神なのだ。
ノベルゲームとは…
パソコン画面で小説を読むように進める電子ゲームの総称で、絵や音声を伴うのが特徴。1990年代後半に「雫(しずく)」「To Heart」(ともにLeaf)などの美少女ゲームが大ヒットし、現在のスマホ向けソーシャルゲームの源流の一つになった。東浩紀「動物化するポストモダン」(2001年、講談社現代新書)は、このジャンルをいち早く哲学的に論じた名著。