苦境の毎日新聞社、減資で「中小企業」に…6つの「節税メリット」
毎日新聞社が3月、資本金を現在の41億5000万円から1億円に減資すると日本経済新聞に報じられた。1月15日に開いた臨時株主総会で承認されたという。 日経新聞によると、2020年3月期の単独売上高は前期比10%減の880億6200万円。最終損失は69億6800万円の赤字(前期は5億3700万円の赤字)で、経営環境は悪化している。2020年3月末の自己資本比率は3%しかない。 今回、資本金を取り崩すことで、税制上は中小企業の扱いとなり、節税につながるとのことだが、どんな節税メリットがあるのか。小林拓未税理士に聞いた。 ●シャープの減資、批判が集まり見直しに 「ここでいう中小企業とは、税法上の中小企業であり、資本金1億円以下の企業のことです。税法上の中小企業には、大きな節税メリットがあります」 具体的にはどんな節税メリットがあるのか。 「以下に6点ほど挙げます。 ①法人税率の軽減税率が適用になる 減資前一律23.2%から、減資後は所得800万円までの税率が15%(所得800万円超は23.2%)になります。 ②交際費が経費(損金)になる 減資前は飲食費等を除く交際費は経費になりません(損金不算入)でしたが、減資後は年間800万円までが経費(損金)になります。 ③欠損金の繰越控除が制限なしに 欠損金とは、税法上の損失ですが、将来の所得と相殺して税金を減らすことができます。減資前は相殺できる金額は所得の50%まででしたが、減資後はこの制限がなくなります。 ④繰戻し還付が適用に 繰戻し還付とは、前期が黒字で、今期に欠損金が生じた場合、前期の黒字と今期の欠損金を相殺して、前期支払った税金を還付してもらう制度です。減資前はこの制度が使えませんでしたが、減資後は使えるようになります。 ⑤外形標準課税が適用されなくなる 外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値などを課税ベースとして税額を算定する課税方式です。したがって、赤字の場合にも支払いが生じます。減資前は、赤字でも外形標準課税による税金の支払いがあったのではないかと思われますが、減資後は赤字の場合の支払いはありません。 ⑥均等割の減額 均等割とは法人住民税の一種で、資本金と人数が増加するにつれ、税額が増加します。こちらも赤字でも課税されますが、減資後は減額されると思われます。 2015年にシャープが資本金を1億円に減資しようと計画しましたが、批判が殺到して、結局資本金を5億円にするという出来事がありました。毎日新聞社の場合は問題にならないのか、今後の動向が気になるところです」 【取材協力税理士】 小林 拓未(こばやし たくみ)税理士 2017年東京都中央区にて開業。「専門家として、長期的な視点で顧問先の発展に尽力する」ことを経営理念に掲げる。2018年から社会保険労務士業務開始。横浜支店と葛飾支店を開設し、業務拡大中。 事務所名 :税理士法人石川小林 事務所URL:https:/www.ktaxac.com
弁護士ドットコムニュース編集部