富士市立中央病院「救急科」開設検討 受け入れ困難解消へ
老朽化による富士市立中央病院の建て替えに伴い、市は21日の新病院建設基本構想等審議会で、市内の医療機関で初となる「救急科」の新設を目指す方針を明らかにした。医師や看護師ら専属スタッフを配置するとともに、救急搬送患者用の設備を拡充する方針。富士医療圏(富士、富士宮市)の中核医療機関として、救急患者の早期診療に向け「受け入れ困難事案」の解消を図る。 同病院は現在も、入院可能な二次救急指定医療機関として、多くの患者を受け入れている。富士市消防本部が2023年度に救急搬送した中等症、重症、重篤患者のうち、同病院への搬送率は60・8%だった。一方、受け入れに時間を要したり、圏域外に要請したりする搬送が課題になっている。救急外来の診察室が3室しかなく手狭で、病床に空きがない場合なども対応が難しくなるという。 開設を目指す救急科はさまざまな症状の救急患者の初期診療を担い、適切な診療科での治療につなげる役割が期待される。新病院は救急外来の診察室を増やし、緊急入院受け入れ専用病棟や手術室を整備する計画。高度医療や急性期医療に対応できる新しい医療機器の導入、HCU(高度治療室)設置も検討する。 新病院建設基本構想案では基本方針に「『断らない救急』を目指して提供体制を強化する」と掲げ、「医療圏外に流出している中等症以上の救急患者を積極的に受け入れる」とした。 ■概算事業費458億円 市が試算 建設費 大幅に膨らむ 富士市は新病院建設基本構想等審議会で、約458億円とする概算事業費の試算を示した。立体駐車場整備や各種委託経費、建て替え計画に伴う土地取得費などは含まず、総事業費は500億円規模になる可能性が出ている。 概算事業費の内訳は新病院建設工事費373億円、設計や監理業務委託などの経費11億円、医療機器など整備費54億円、解体工事費20億円。建築資材や人件費の高騰で、当初257億円と想定していた建設工事費が大幅に増える見通し。 新病院は同市高島町の現在地に建て替え、市は遅くとも電子カルテ関連システムの更新期を迎える2031年10月までの開院を目指している。基本構想の策定時期を当初予定していた25年3月から3カ月早める計画で、医療従事者や有識者らでつくる審議会は12月上旬に答申する。 基本構想案では、新病院の病床数を現在の520から450前後に減らす方向で審議している。
静岡新聞社