ジェンダーにかかわらず活躍できる職場の実現に向けて。人事は「FemTech」で女性の働き方をどう支援できるか
最近よく耳にするようになってきた「FemTech(フェムテック)」。「Female」と「Technology」からなる造語で、月経や妊娠、出産など女性特有の健康課題に対して、テクノロジーを用いて解決する商品やサービスのことをいいます。今、FemTechを活用して女性の働き方を支援する企業が増えています。男性に標準化された従来の職場環境を見直し、誰もが働きやすい職場環境を実現するためには、まずジェンダー平等に関する正しい知識をつけ、適切にテクノロジーを活用する必要があります。科学技術分野におけるジェンダー平等に向けて取り組んでいる名古屋大学大学院 生命理学専攻 准教授の佐々木成江さんに、日本のジェンダー平等の現状やFemTechの活用についてお話をうかがいました。
改善スピードが圧倒的に遅い、日本のジェンダー平等の現状
――日本におけるジェンダー平等の現状を、どのようにご覧になっていますか。 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数において、日本は2006年に115ヵ国中79位でしたが、2021年には156ヵ国中120位と順位を落としています。この指数で特に注目したいのは、スコアの伸び幅です。スコアは「1」に近づくほど平等であることを示しますが、2021年の日本の総合スコアは0.656で、2006年から0.011ポイント伸びました。しかし、G7各国と比較すると、この15年の伸び幅は日本が最下位。2006年の調査対象国115ヵ国の中でも後ろから9番目です。 G7で最も伸びたのはフランスで、0.132ポイント。日本の12倍も伸びています。伸び幅が5位のドイツと6位のイギリスは、総合順位がもともと高水準(ドイツは5位→11位、イギリスは9位→23位)であるため、伸び幅が小さくても仕方ありません。 ヨーロッパやアメリカでも、完全平等の「1」になるために60年は必要といわれています。日本の属する東アジア地域は165年といわれており、120位の日本は200年ほどかかると試算されています。 ――ジェンダーギャップ指数は、さまざま分野で構成されています。そこから見える傾向などはありますか。 やはり「政治」と「経済」がキーになります。「経済」「健康」「教育」「政治」の分野のうち、健康と教育に関して先進国はほとんど「1」に近いところにあります。一方、政治と経済は国によってバラつきがあり、国の本気度が見える分野でもあります。日本はこの政治分野が153ヵ国中149位と圧倒的に弱い。政治が変われば、経済分野にも大きな影響をあたえるので全体の順位も大きく上げられるでしょう。実際、日本より12倍進んでいるフランスでは、政治分野のジェンダーギャップの改善が順位アップに貢献しています。 海外の動向を見ていると、政治分野でのジェンダーギャップ解消には一定の割合を女性に割り当てる「クオータ制」しかないと考えています。人数が増えることで見えてくる課題も多くあります。経済分野の女性の管理職比率に関しても同様ですが、人数を増やして比率を上げて、ようやくスタート地点に立てるのです。