高プロ制が導く異次元の「労働者保護」外しの未来
過労死増えて認定は困難に
このような危険性を指摘する声に対し、政府も労基法に代わるさまざまな保護措置を盛り込んではいます。週休1日の規定がなくなる代わりに、保護措置として、年104日、4週間に4日以上の休日を義務付けたのはその一つです。 いまの労基法では休日は年間最低52日以上とされているので、ネット上では「現行より倍増」と持ち上げる声も流れています。ただ、注意すべきは、従来のような1週単位ではなく4週単位ということです。これだと、月の28日のうちの初めの4日だけ休ませ、後は24日間、毎日24時間ぶっ通しで働かせることも理論的には可能です。翌25日目に1日休ませれば、月末までまた毎日24時間働かせることができ、計月600時間を超える労働時間も合法化されるとの指摘もあります。 これでは過労死が増える、という批判に対して設けられたのが、「在社時間」と「社外で働いた時間」を合わせた「健康管理時間」の把握義務です。この時間をもとに、残業代は払わなくていいから企業には4つの「健康確保措置」をとってほしいというのです。 ここでは、1日の労働時間規制である「インターバル規制」の導入や、年に連続2週間の休日確保、などの結構なメニューが並んでいます。ただ問題は、そこから「一つだけ選べばいい」という点です。4つの措置のうちには「省令による一定の時間を超えた働き手には健康診断を受けさせる」という選択肢があるので、これを選べば、健康診断だけ受けさせればOKになってしまうわけです。 残業代という経済的な歯止めがなくなり、健康診断を受けさせれば極端な長時間労働もお構いなしとなれば、過労死は増える恐れが強まります。会社の把握した「健康管理時間」と実労働時間が異なる場合、労災は今以上に認定しにくくなるでしょう。過労死の遺族たちが訴える「過労死が増えて過労死が見えなくなる」事態が起こりうるということです。 「日本維新の会」など一部野党の要求で高プロ制適用への同意を働き手が後で撤回できるよう修正もされましたが、会社との力関係でどこまで活用できるか難しく、指針でも対応できる程度の修正に過ぎません。