緊急事態宣言発令がJリーグにもたらす新たな不安
新型コロナウイルスに感染し、2日に退院した日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長も、医療現場の最前線を見聞きしてきた経験から「医療従事者を感染させない、疲弊させない状況を作り出さなければいけない」と医療崩壊を防ぐうえで、待ったなしの状況にあると訴えている。 医療崩壊が起きれば緊急事態宣言の解除も必然的に先送りにされ、スポーツ界を含めて、先行きがまったく見通せない、いま現在の欧米と同じ状況に直面する。地域に緊急事態宣言が発出された場合の対応として、当初は無観客試合での開催をあげていた村井チェアマンは、再開日程を白紙に戻すことを決めた3日の臨時合同実行委員会後のメディアブリーフィングでトーンを大きく変えている。 「無観客試合でも(スタジアムへ)移動する選手やスタッフの感染リスクが存在するということを考えれば、無観客試合だからいいというレベルでもなくなりました」 大都市圏における緊急事態宣言の期間が延びるごとに、シーズン全日程を消化するハードルが上がっていく。公式戦の再開を迎えるにあたって、ゼロベースに戻った選手たちが再びコンディションを作りあげていくのに時間を要するためだ。 そして、リーグ戦の開催が10年総額2100億円の大型契約を結んでいる動画配信サービス『DAZN(ダ・ゾーン)』との契約に直結する、と言われているなかで、1日には中断・中止となった試合の放映権料を支払わない意向をDAZNが各スポーツ団体へ通告したとロイター通信が報じた。
「契約の修正などに関する申し入れはありません。頻繁に協業していて、さまざまな協力体制の申し合わせをしている最中です。トップ間でもリレーションが強く、ご心配いただいていることは日本においてはありません」 こう語った村井チェアマンは守秘義務を理由に、DAZNとの契約内容に関する質問には明言を避けるスタンスを貫いている。ただ、2016年にサービスを開始し、日本の他にアメリカ、カナダなど9カ国で事業を展開しているDAZNにとっても、全世界のスポーツが中断する事態は想定外だったはずだ。 経営基盤が脆弱なJ2の中位以下やJ3のクラブを含めた全クラブへ、Jリーグは競争モードを今シーズンに限っては共存に変えることを宣言している。資金繰りを悪化させて経営危機に陥らないように、均等配分金の前倒し支給や新たな融資制度の設立で救済する青写真を描いてきた。 しかし、総額で100億円にのぼる均等配分金を含めて、原資の大半をDAZNからの放映権料が占めている。JリーグとDAZNとの契約内容がわからないので推測の域を出ないが、政府による緊急事態宣言の発出とともに、新たな不安が頭をもたげてきたことだけは確かだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)