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「消える」エンジン音 ボルボ・マイルドハイブリッド

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NIKKEI STYLE

北欧生まれの高級車「ボルボ」のミッドサイズ多目的スポーツ車(SUV)「XC60」に、マイルドハイブリッド仕様が登場した。2019年から順次、新型車の電動化を進めると明言しているボルボの主力となるモデルだ。ボルボ初のマイルドハイブリッドを、自動車ライターの大音安弘氏がリポートする。

■今後発売するモデルはすべて電動車両に

スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」は、19年以降に発売するすべての新型車を電動車両にすると表明している。これは欧州や中国などで強化される環境規制に対応するためだが、日本でも年内に発売する新型車をすべて電動化するというから、かなりスピーディーな対応だ。「電動化」と聞くと、充電した電気のみで走る「電気自動車(BEV)」が思い浮かぶが、ボルボのいう「電動化」にはハイブリッドやプラグインハイブリッド(PHV)も含まれる。要は「エンジン(内燃機関)のみを搭載する新型車はもう発売しない」ということだ。 今後、ボルボは電気自動車の投入も予定しており、21年に日本上陸予定だ。現在の同社のラインアップにも、同社が「T6ツインエンジン」と「T8ツインエンジン」と呼ぶ、出力が異なる2タイプのPHVがあるが、大容量バッテリーや外部充電機能が必要なPHVは車両価格も高く、必然的に上位モデルを中心とした展開となってしまう。 そこで同社は、よりバッテリーが小さく低コストの48Vマイルドハイブリッドを当面の電動化の主力とする方針だ。マイルドハイブリッドはエンジンの補助に「ISGM」と呼ばれるモーターを使う、いわば「電動アシスト」のようなハイブリッドシステムのこと。トヨタのプリウスに代表されるようなストロングハイブリッドと違い、モーターだけで走行することはできない。だが、ターボエンジンが苦手とする低速からの加速をアシストすることや、減速時にエネルギーを回生することで燃費向上が期待できる。

■電動化の主力となるマイルドハイブリッド第1弾

今回第1弾としてマイルドハイブリッド仕様が設定されたのは、ミッドサイズSUV「XC60」とラージサイズSUV「XC90」の2モデル。ボルボといえば、ステーションワゴンのイメージが強いが、今、世界で最も売れているボルボは、XC60だ。日本でも「XC60」とコンパクトSUVの「XC40」が販売の軸となっている。8月には第2弾としてボルボSUVのガソリン車がマイルドハイブリッド車に置きかえられ、SUVはすべて電動化された。 第1弾として新搭載したマイルドハイブリッドは「B5」という名前が与えられている。これは、従来のガソリンエンジン「T5」に置き換わるものだ。従来型の「T5」は2.0L直列4気筒ターボエンジンで、最高出力254ps、最大トルク350Nmを発揮。SUVに適した力強いエンジンだった。 これを置き換えるB5は、T5エンジンの改良型にモーターを追加したシステム。エンジン性能は、最高出力250ps、最大トルク350Nmと同等を維持し、そこに最高出力10kW(13.6ps)、最大トルク40Nmというモーターの力がプラスされる。 マイルドハイブリッドのメリットは、モーターもバッテリーも小型で余分なスペースが不要なこと。モーターは、従来のスターターや発電機の役目も担うため、既存のパワーユニットを置き換えるような形で搭載できる。よりパワフルで燃費が向上し、追加コストも少ないというシステムなのだ。 燃費は状況によって違うので一概には言えないが、参考までにボルボ・カー・ジャパン(東京・港)による一般道での実測数値は、T5が9.4km/Lだったのに対し、B5は11.3km/Lだった。なおXC60 B5の価格はベースグレードの「XC60 B5 AWD モメンタム」が639万円、上位グレードの「XC60 B5 AWD インスクリプション」が739万円。マイルドハイブリッド化による価格上昇は十数万円程度にとどめられている。 ■見た目は変わらないが中身は激変 では、走りはどう変化したのか。「ボルボXC60 B5 AWD インスクリプション」で市街地から高速道路を含めた郊外まで、幅広いシチュエーションを試してみた。実車を目の前にしても、見た目の変化はほとんどない。 だがエンジンを始動すると違いに気づく。従来のスターターモーターの代わりによりパワフルなISGMを搭載したことで、始動がより静かでスムーズになっている。もともと静粛性が高いクルマだが、アイドリングストップ後のエンジン再始動の振動や音から解放され、さらに上質感が増した。 B5はエンジン性能自体が高いため、加速でモーターアシストの恩恵を強く感じることはない。それよりも驚かされたのは、走行時の静粛性の向上だ。市街地や高速道路を巡行していると、車内にエンジン音がほとんど届かないのだ。 静かすぎて「エンジンが動いていないのでは」と疑い、試しにアクセルを踏み込んでエンジン回転数を高めると、回転上昇の度合いが分かる程度の小さなエンジン音が車内に伝わってきた。実は、B5のエンジンは遮音材や車体との取り付け部品にも手を加えており、電動化とともにエンジンの存在感を薄める工夫が施されていたのだ。 さらにターボチャージャーも改良され、反応が良くなっている。これにより全面的にスムーズで主張の少ないエンジンに仕立てているのだ。完全電動化に向け、ユーザーを慣れさせる意味とともに、電動化を「高級化路線」のひとつの武器に変えようという狙いもあるのだろう。 従来型のT5を搭載したXC60は、ターボエンジンらしいパンチのある加速とリズミカルなエンジン音を感じられ、ややマッチョ感のあるアクティブなSUVにふさわしい味付けだった。一方のB5は、電動化だけでなく、エンジン自体も洗練され、控えめとなったことで高級感を増している。XC60の力強いデザインにはタフな走りを連想させる「T5」も似合っていたが、ボルボというブランドが目指す方向性を考えると、こちらがベターということなのだろう。 電動化を環境対策だけでなく、高級感を高めるための武器として手なずけた技術者たちの味付けは、見事といえる。実はB5は、新たに気筒休止機構や電動式ブレーキペダルなどを採用するなど、技術的な進化も少なくない。ただ、その違いをドライバーに感じさせないほど、しっかりと自然に作り込んでいる点も評価したい。 クルマ好きからするとエンジンの存在感が薄まったことは、少し寂しくも感じられる。だが、車内はより音楽を楽しむのにふさわしい環境となった。XC60には、エントリーグレードでは170W・10スピーカーのオーディオシステムが備わる。上級グレードでは「ハーマンカードン」の600W・14スピーカーのシステムに変わる。さらにオプションとして、英高級オーディオブランド「バウワース・アンド・ウィルキンス(B&W)」の1100W・15スピーカーのシステムまで用意される。今やSUVをセダンやミニバンの代わりに使う人も多くなった。それだけに快適性の向上は多くの人にメリットとなるだろう。 電動化は、環境対応のためにはどのメーカーも避けては通れない道だ。だが電動化によるコスト増に見合うだけのユーザーメリットを提供するのは容易ではない。そんな中、電動化をクルマの味の向上にうまく盛り込んできたところに、高級車ブランドへと転身を遂げたボルボの意気込みを改めて感じた。 大音安弘1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。

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