自動車業界が未着手の17億人、FinTechで市場開拓へ
フィンテック企業のGlobal Mobility Service(以下GMS、東京・港)は自動車の位置を把握でき、エンジンを遠隔で起動制御できるIoT装置を開発した。この装置によって、ローンを組む際、購入者の与信の補強につなげた。GMSが目を付けたのは世界に17億人いるローンを組めない理由で自動車を購入できない層だ。(オルタナS編集長=池田 真隆) 自動車業界が未着手の17億人、FinTechで市場開拓へ
「真面目に働く人が正しく評価される仕組みをつくりたい」――こう話すのは、GMSの中島徳至社長だ。今から25年以上前に電気自動車開発の先駆者としての役割を担ったゼロスポーツという会社の創業者だ。 GMSは金融と情報技術を結び付けたサービスを展開するフィンテック企業だ。創業は2013年だが、デンソーや川崎重工業、ソフトバンク、SBIホールディングスなど10社以上の上場企業が資本参画している。2020年10月までに累計56億円の資金調達を実施した。 独自で開発したサービスは次の2つだ。一つは自動車に搭載するIoT装置で、取り付けた車のエンジンを遠隔で起動制御できる。もう一つは、リアルタイムで位置情報などの車両情報を把握し、利用者の働きぶりを分析・可視化できるプラットフォームで、これは金融機関の決済サービスと連携ができる。 これらを実装することで、金融サービスの提供者はローンやリースなどで販売した自動車を24時間体制で管理できるようになった。購入者が支払いを滞納した場合は遠隔でエンジンを起動制御し、支払いが確認できると直ぐに再起動できるようにした。 この仕組みができたことで与信補強にもなり、支払い能力はあるが与信審査に通らなかった層にも自動車の販売をできるように変えた。
ローン審査の非通過率、フィリンピンでは9割
世界にはローンを組めない人が約17億人いる。特に南半球の多くの国では口座を持っている割合はわずか1―3割。アジア圏にも信用が原因でローンを組めない人は多い。同社によると、自動車のローン審査の非通過率はインドネシアで7割、カンボジアで8割、フィリピンでは9割に及ぶという。 これらの国では、車は必需品だ。余暇に楽しむためではなく、仕事や日常生活に必要なのだ。車がなくても働ける職はあるが、車を持つことで格段と就ける職の選択肢と収入は増える。 現在同社はフィリピン、カンボジア、インドネシア、日本の4カ国で展開している。実は日本でも3割が自動車のローン審査に落ちている。高齢者やシングルマザー、非正規労働者に外国人労働者ら、支払うことはできるが与信審査に通らず自動車を購入できない人は年間で200万人いるのだ。 従来、フィリピンの金融機関のデフォルト実績は20%だったが、同社の仕組みを導入したローンのデフォルト率は0.9%と驚異的な数値を記録する。購入者の車両データから運行情報と支払い状況や収入など金融にかかわる情報を掛け合わせることで、働きぶりを可視化し、金融機関と連携することで、教育ローンなど新たな信用創造につながる。金融機関からすれば、今まで貸せなかった人にローンを貸せるようになり、回収率も高く、新たな金融の扉を開けている。