中村メイコさんが明かしていた多才の人「小沢昭一さん」の素顔 威張らない、酒は呑まない、けれど「お色気のほうは容赦なく…」
俳優、俳人、評論家、エッセイスト、そしてラジオパーソナリティ。その才能を存分に発揮し続けた小沢昭一さんが死去したのは、2012年12月10日のことだった。享年83。ラジオ番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」(TBSラジオ)の影響で、時に威勢よく、時に艶っぽく喜怒哀楽を乗せた声と語り口を覚えている人も多いだろう。そんな小沢さんの素顔を、家族ぐるみの付き合いだった中村メイコさん(2023年12月31日死去、享年89)の言葉で振り返る。 【レア写真】「また明日のこころだァーッ」懐かしい小沢さんの声…ラーメンをすする70年代の若い姿も (「週刊新潮」2012年12月20日号「『小沢昭一さん』が妻と楽しんだ『午前零時の晩餐』」を再編集しました) ***
“早寝早起きは毒”が信条
12月10日午前1時20分、英子夫人に看取られ静かに息を引き取った小沢昭一さん。お達者な頃の小沢さんなら、朝まだきこそ、仕事に興が乗る時間帯だった。 午前零時前後に食事を摂り、執筆に取り掛かる。就寝は午前4時。昼まで寝る。“早寝早起きは毒”が医者公認の信条だ、と小沢さんは笑ったものだが、2004年に「週刊新潮」(7月22日号)の「週刊食卓日記」に登場してくれたことがある。 〈6月25日(金) 11時、第3食事。ご飯と酢豚。奈良漬(妻は一品勝負を知っている)。酢豚は豚少々に野菜タップリ、ピーマンがぶがぶ。深夜原稿かき。テレビをチラチラ見て捗らず。4時就寝〉 馬券売り場近くの喫茶店で、競馬中継を聞きながら、TBSラジオ「小沢昭一的こころ」の下準備を進めることも多かった。
ちょっとぶらっと行って来る
前立腺がん発覚から14年の闘病だった。享年83。 「訃報を知って、同じ世田谷区でしたので、主人とふたりでお伺いしました」 中村メイコさんと神津善行氏夫妻である。 「夫があんなに泣いたのは初めてです。小沢さんは麻布中学の2年先輩で、夫は演劇部でかわいがっていただいた仲でした。私にとっての小沢さんは、喜劇とはこういうものだよ、話術はね、とそれとなく教えてくださる方でした」 俳句を楽しんだ。句歴は40年を超える。威張らない。酒は呑まない。けれど、 「小沢さんはお色気のほうも容赦なく、地方へ行くと探検するんです。ちょっとぶらっと行って来る、と」 されど後腐れなし。 「小沢さんと奥様はとても素敵なご夫婦で、最後は足を弱らせている小沢さんでしたが、女房といる時間が楽しくてしょうがない、とおっしゃっていました」 達人逝く。
デイリー新潮編集部
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