イスラエル、シリアの海軍艦隊を攻撃 全土で空爆を350回以上実施と発表
イスラエルは10日、シリアの海軍艦隊を攻撃したと発表した。バッシャール・アル・アサド政権の崩壊を受け、シリアの軍事資産を無力化するためだとした。また、シリア全土で数百回にわたって空爆を実施したとした。 イスラエル国防軍(IDF)は声明で、同軍の艦船が9日夜、シリアのアル・バイダとラタキアの港を攻撃したとした。当時、15隻の船が停泊していたという。 イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は声明で、IDFの狙いは「イスラエル国家を脅かす戦略的能力の破壊」だと説明。シリア艦隊を破壊する作戦は「大成功」だったとした。 BBCは、ラタキア港における爆発の映像を確認した。船や港の一部が大きな損傷を受けている様子が映っている。 IDFはまた、シリア全土で空爆を350回以上実施したとした。イスラエルが占領しているゴラン高原とシリアの間にある非武装地帯にも、地上部隊を移動させたとした。 さらに、シリアの首都ダマスカスやホムス、タルトゥース、パルミラでも、飛行場や軍用車両、防空兵器、兵器生産施設、武器倉庫、弾薬庫、「多数」の艦対艦ミサイルなどを標的に攻撃を実施したと説明。それらが「過激派の手に渡るのを防ぐ」ためだとした。 イギリスに拠点を置くNGO「シリア人権監視団(SOHR)」も10日、アサド政権が反政府勢力によって倒されて以降、シリアに対するIDFの攻撃を310回以上確認しているとした。 SOHRの創設者で代表のラミ・アブドゥル・ラーマン氏は、イスラエルによる一連の攻撃を、「シリア軍の全能力」を破壊していると説明。「シリアの土地が侵害されている」と述べた。 一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はビデオ演説で、アサド前大統領を失脚させた反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」に向けてメッセージを発し、イランが「シリアに再び定着する」のを許すなら、イスラエルは「強力に対応する」と述べた。 ネタニヤフ氏はこれまで、シリアの新政府と平和な関係を望むと表明している。シリアへの介入については、自国を防衛するためのものとしている。 ■ゴラン高原の緩衝地帯付近では IDFは、ゴラン高原に隣接する非武装緩衝地帯での動きをめぐっては、部隊がシリア領内に入ったと認めた。ただ、ダマスカスに戦車が接近しているとの報道が出ていることについては、報道は「誤り」だとした。 BBCヴェリファイ(検証チーム)は、ゴラン高原の緩衝地帯から500メートルほどシリア領内に入ったクウダナ村近くの丘に、IDF兵士が立っているのを画像で確認した。 ネタニヤフ氏は、緩衝地帯にあるシリアの拠点をIDFが抑えたことについて、「適切な取り決めが見つかるまでの一時的な防衛的措置」だと9日に述べている。 トルコは、イスラエルが緩衝地帯に入ったことを非難している。トルコ外務省は、「シリア国民が何年も望んできた平和と安定が実現するかもしれないという大事な時期」に、イスラエルが「占領気質」を見せつけていると批判した。 ゴラン高原は、シリアの首都ダマスカスの南西約約60キロメートルに位置する岩だらけの高原。イスラエルは1967年の6日間戦争の終盤にシリアから奪った。 1974年には、イスラエルとシリアの停戦合意の一環として、緩衝地帯の「兵力引き離し地域(AOS)」が設定された。 しかし、イスラエルは1981年、ゴラン高原を一方的に併合。国際社会はこれを承認していないが、2019年にトランプ米政権が単独で認めた。 (英語記事 Israel confirms attack on Syrian naval fleet)
(c) BBC News