タクシー不足の大分県別府市で「日本版ライドシェア」…夜間にエリア限定で実証運行
運転手の減少でタクシー不足が課題となっている大分県別府市で、稼働していないタクシーを活用した「日本版ライドシェア」の実証運行が来月中旬から始まる。県内では初めての試みで、2種免許を持たない一般ドライバーらが送迎を担い、市中心部の繁華街と市北部地区で夜間限定で運行する。(池田圭太) 【写真】いくつもの湯煙が上がる大分県別府市の温泉街
市によると、市内に事業所を置くタクシー会社は8社あり、計381台を所有している。ただ、運転手は10月末時点で274人で、稼働率は55%にとどまり、特にJR別府駅周辺の繁華街エリアと、JR亀川駅や血の池地獄などがある市北部エリアでは夜間のタクシーが不足している。
このため、市はライドシェアの導入に向けて9月から各事業所と協議し、10月に九州運輸局大分運輸支局に許可申請していた。
実証運行では、8社が稼働していない車両計10台を活用。屋根の上のあんどんを外し、緑ナンバーを白ナンバーに変えたうえで、各社の事務職員や運転手経験者が送迎する。
10台のうち、8台は別府駅東側の繁華街エリアで金、土曜の午後6時~翌午前1時に、2台が市北部エリアで月~金曜の午後8~11時に運行する。
利用者は専用の配車アプリで乗降場所を指定する。乗降場所のいずれかがエリア内であれば利用できるが、市町をまたぐことはできない。運賃は通常のタクシーと同水準という。
長野恭紘市長は26日の定例記者会見で「タクシーで帰れないから(繁華街などに)行かないという人たちの気持ち(の壁を)をクリアしたい」と述べた。
同市では6月から、交通空白地などで市町村やNPO法人が主体となって運行する自治体ライドシェアの実証運行も行われている。
「湯けむりライドシェア」の名称で、市内2路線でワゴン車を活用した有料のコミュニティーバスを走らせている。市によると、10月末までの延べ利用者数は、6月に始まった南部循環線で約1500人、10月にスタートした関の江循環線で約580人で、いずれも予想を上回るペースで利用されているという。
◆日本版ライドシェア=地域交通の担い手や移動の足を確保するため、政府が3月に創設した。タクシーが足りない地域や時期、時間帯に、タクシー会社の運行管理の下で、自家用車や一般ドライバーによる有償での送迎ができる。国土交通省によると、10月末時点で、東京や福岡など全国46地域で運行されている。