元グーグル本社副社長が語るGAFAの社会的責任
欧州連合(EU)欧州委員会は15日、GAFAなど巨大IT企業への規制を強める2法案を発表した。違反した場合は最大で世界の年間売上高の10%の罰金が科される可能性がある。オルタナ編集部では2019年6月末に発行した雑誌オルタナ57号で「GAFAの社会的責任」という特集を組んだ。デジタル・プラットフォームという巨大事業領域を担う企業の社会的責任を考察した。特集の一環で取材した元グーグル米国本社副社長の村上憲郎氏のインタビュー記事を再掲する。 元グーグル本社副社長が語るGAFAの社会的責任
GAFAだけをやり玉にあげて、大衆受けを狙って批判する姿勢には、私は反対だ。GAFAが叩かれる背景には、所得格差の広がりや、IoTや人工知能によって起きる第4次産業革命への大衆の不安などがあると見ている。確かに、所得格差が広がった一つの要因にGAFAがあると思うが、GAFAの動きを規制すれば解決するというわけではない。 こうした考えを前提に、私のGAFAに対する考えを述べていく。まず租税回避についてなのだが、GAFAはすべて株式会社だ。払わないでいい税金を支払うことは、株主に対する責任の放棄となる。批判すべきはGAFAではなく、租税制度だ。OECDを中心とした先進国で制度を改定する必要がある。 制度ができてから、GAFAのコンプライアンスは改めて検証されるべきだ。次に個人情報についてだが、EUでは2018年GDPRが施行され、GAFAの動きは縛られている印象だ。グーグルはGDPRに違反したとして、約62億円の制裁金を科された。フェイスブックもそうだが、GAFAはプライバシーポリシーを改正するなどで、「データのオーナーシップはユーザーにある」という方向性を更に明確にした。
GAFAの狙いは金儲けではない
GAFAの狙いは金儲けなのか。私の答えはノーだ。株式会社である以上、金儲けという側面で見られることは仕方がない。だが、やっていることはライフスタイルを変える「ムーブメント」だ。 GAFAは暮らし方や働き方をより快適に効率化させ、その結果として、ディストラクティブな影響を他の産業に与えている。だが、快適化と効率化の結果として、芸術やスポーツ、ボランティアに割く時間は増していく。 GAFAには、世界中から優秀な人材が集まってくる。地頭がいいので、CSRへの意識も当然持っている。一方で、「これがCSRだ」と標榜することが得策であるかは疑問だと思っているのではないか。もし公言したら、重箱の隅を突くような指摘を受けて、不毛な議論に巻き込まれるリスクを恐れている。 不言実行で社会貢献している印象を持つ。経営陣は公にしていないが寄付を行い、社員のプロボノ支援、1 0 0 % 自然エネルギーへの切り替え、環境問題へのコミット、LGBT対応などにも積極的だ。