海外メディアは、安倍首相辞意をどう報じた?評価した点、達成できなかった点
7年半におよぶ長期政権を率いてきた安倍晋三首相が8月28日、体調などを理由に辞意を表明した。 【写真】「日本を取り戻す」政権に返り咲いてから辞意表明まで… 安倍政権の7年間を写真で振り返る 海外のメディアは、首相としての安倍氏の評価や政権の功罪について、どう報じたのか。【 BuzzFeed Japan / 冨田すみれ子 】
ニューヨーク・タイムズ「改憲」「北方領土問題」達成できず
NHKが28日午後2時すぎに「安倍首相、辞任の意向固める」と速報を打つと、ニューヨーク・タイムズは間もなく「日本で任期最長の安倍晋三首相、病気を理由に辞任へ」と東京発で報じた。 ニューヨーク・タイムズの英文記事では安倍首相について、東日本大震災からの復興を率い、アメリカのトランプ大統領とも良好な関係を築いたことを評価。 一方で、「2006~7年(第一次安倍政権)に続く2回目の首相ポストであり、長期にわたった政権にも関わらず、安倍氏は目指していたいくつかの目標を達成できなかった」と指摘した。 達成できなかった点として上げたのは、安倍政権が実現を目指していた「憲法改正」や「ロシアとの北方領土問題」などだ。 記事では、安倍氏への支持は2017年の衆院選で自民党が圧勝した際にピークを迎え、「ここ最近は、第二次政権が発足してから不支持率が最高となっていた」と指摘している。
BBC「長年、潰瘍性大腸炎に苦しんだ」「防衛強化も改憲達成できず」
イギリスの公共放送BBCは、辞意を伝える英語の速報記事で、安倍首相の持病についても報じた。 記事冒頭では「彼は長年、潰瘍性大腸炎に苦しんでおり、最近、健康状態が悪化していたようだ」と指摘し、「2007年の第一次安倍政権時の首相辞任の際にも、10代の頃からの持病である潰瘍性大腸炎を理由に突然辞任した」と説明した。 「保守派」「ナショナリスト」として知られたとする首相としての安倍氏の功績については、経済政策「アベノミクス」などに言及。 「日本の防衛を強化し、軍事費も増加した」一方で、「改憲は達成できなかった」と指摘した。
ブルームバーグ「日本経済の再生に注力」「拉致問題解決せず」
8月27日付の記事で菅官房長官にインタビューし、「安倍氏は2021年9月の任期まで首相を全うする」と報じていたブルームバーグは、28日の辞意の表明後、第二次安倍政権を振り返る詳細な記事を出した。 記事では、辞意を固めたと報道されたことにより、日経平均株価が一時2.7%安の2万2594円に下落したことなどを指摘。 第二次政権の経済政策については「大胆な金融緩和などからなる経済政策『アベノミクス』を掲げ、リーマン・ショックで落ち込んだ日本経済の再生に力を注いだ」と評価した。 また、安倍氏が「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」として力を入れていた外交政策に関しては、トランプ大統領との信頼関係構築などに言及した一方で、北朝鮮による拉致問題が発展していないことなどを指摘した。 また、「父親の晋太郎元外相の遺志を引き継ぎ、任期中になんとしても解決したいとしていたロシアとの北方領土交渉は事実上棚上げ状態のまま」とした。