なぜ来年6月に那須川天心vs武尊のドリームマッチが実現したのか…水面下の極秘会談と会見で飛び散った火花
最初はルール問題で紛糾した。天心が「そもそも階級が違う」と語った通り、階級の違う2人が歩み寄る必要があり、500グラム単位での攻防があった。最終的に前日計量58キロ(当日62キロ)で決着した。当日のリカバリー後のキロ数まで制限するのも異例だろう。どれだけナーバスにルール問題の交渉が行われたかがよくわかる。まだ発表はされていないが、使用グローブのオンス数についても両陣営は激しい攻防をしている。だが、それらはすべてリング上の問題。2人の気持ちだけではどうしようもない壁があった。リング外でさらに大きな問題が立ち塞がったのである。 今大会をサポートするスポンサー筋から、「試合は大晦日でないと困る」との物言いがつき、29日ではなく、大晦日で仕切り直すこととなり、中立の舞台でなければならないため「大晦日に2つの場所に分けて大阪ドームとさいたま、RIZINとRIZINとは違うイベントをやるとかいろいろなパターンを考えた」(榊原CEO)というプランまで浮上したが、今度は、中継局の問題などのクリアすべき点が解決できず、もう時間的に間に合わなくなった。しかも、天心は来年4月2日に国立代々木競技場第一体育館で開催される『RISE ELDORADO 2022』がキックの引退マッチとなることが発表されていた。 もう夢の対決は完全消滅か…と思われたが、榊原CEOが「発想を変えて」引退をもう1試合延ばすことを提案。それは天心自身が「まさかそこでそれくるか」と思ったほどの奇想天外なアイデアで、当然、引退マッチとして先に興行を発表していたRISEサイドやボクシングの受け入れ先の帝拳サイドの了解もいる作業で「だいぶ無理を言って人間関係がおかしくなる手前くらいまで」(榊原CEO)難航した。 もし合意ができなければ、ファンを納得させるため、大晦日には、武尊が“掟破り“のRIZINのリングに上がり総合系のファイターと対戦する第2プランまで考えられ対戦候補までリストアップされたほどだったが、最終調整がなされ、24時間前のギリギリのタイミングで両陣営がサインした。まさに舞台裏も含めて奇跡のドリームマッチが実現することになったのである。 会見では早くも火花が散った。 武尊が「どれだけ自分より優れている選手だったとしても僕は気持ちで負けなければ絶対勝てる」と言えば、天心も「階級が上なので(武尊は)僕より全然圧力はあるが、そこはしっかりと対策して自分のやりたいことをしっかりやる。勝っている点は、いっぱいあるがマインドですかね」と負けてはいなかった。 さらに両者の意見がぶつかったのが、この試合の意義を巡っての論争。