福島の日本記録の陰に潜む女子短距離界の「空洞化」問題
高校では指導者が体重を管理するなど、徹底指導することが多いが、大学では自主性に任せる部分も大きくなる。実家を離れて、体重が増加してしまう選手も少なくない。「スーパー高校生」と呼ばれるような選手が、高校卒業後に伸び悩んでいるのが“空洞化”につながっている。 しかも、良くないことに高校卒業後に伸びないことを、高校・大学の指導者が双方のせいにしていることだ。高校の指導者は「大学の指導が悪い」と話し、大学の指導者は「高校時代の練習が良くない」という言葉をよく耳にする。 他にも「リレー」の存在が選手たちの目線を下げている。福島の成長もあり、女子4×400mリレーは4年前のロンドンで、五輪としては48年ぶりの出場を果たした。日本選手権はリレーメンバーの選考レースでもあるため、福島以外は個人種目の参加標準記録ではなく、「順位」を気にしている選手が多いのだ。 高校と大学の連携。選手の自立。個人で世界大会を目指すんだという高い志。女子短距離が明るい未来へ進むためには、これらの課題を早急に解決する必要があるだろう。福島が健在のうちに、次世代のエースに“バトン”を渡さないといけない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)