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新型コロナ、男性の方が高リスク──社会規範や行動も要因

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The Guardian

【執筆:Philip Ball】  多くの点で、女性よりも男性の方が脆弱(ぜいじゃく)なことは周知の事実だ。平均して男性は女性と比べ寿命が短く、心臓病やさまざまな種類のがんなど、生命を脅かす病気のリスクも高い。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」も、どうやら同じパターンのようだ。3月20日までの時点で新型コロナウイルスによる死者数を男女別に集計していた6か国すべてにおいて、死者に男性が占める割合は女性よりも高かった。うち4か国(中国、フランス、イタリア、韓国)では、男性の致死率が女性よりも50%以上高かった。  こうした数値は、過度に信用しすぎない方が良い。検査の実施範囲や死亡データの記録方法、あるいは報告の仕方の違いによって、データが偏る可能性がある。しかし「新型コロナウイルスは、男性の方が危険性が高い」という一般的な傾向については、信用するに足る理由がありそうだ。  なぜかは分からないが、これは生物学的な差異を必ずしも反映するものではない。COVID-19がより危険なのは基礎疾患、特に心臓や肺(閉塞など)に問題がある人や高血圧症の人だ。そしてこうした疾患は圧倒的に男性に多い。 ■社会規範や男性の行動も要因  原因の一部は、行動に関わっている。喫煙や飲酒など健康を損なう習慣は、平均的に男性の方が多い。新型コロナウイルスが男性にとってよりリスクが高い要因として、特に喫煙が疑われている。新型コロナウイルスによる死者における男女比がほぼ2対1である韓国では、男性の喫煙率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も高いが、女性の喫煙率は最も低い。喫煙以外の行動の違いも要因となっている可能性はある。例えば、手洗いの勧奨に従うか否かだ。  さらに、生物学的な差異が関与している可能性も十分ある。男性の免疫システムは女性と比べて弱く、そのため細菌感染症などさまざまな伝染病にかかりやすい。有力な説明の一つに、免疫システムが病原体に対する炎症反応を引き起こす際に、男女で違いのある性ホルモンが関与しているという説がある。  過去のさまざまなパンデミック(世界的な大流行)に鑑みると、SARS-CoV-2の危険性は男性の方が高いと予想される。新型コロナウイルスは、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を引き起したウイルスの近縁種だ。SARSの致死率は男性の方が著しく高かった。  新型コロナウイルスやその他の生命を脅かす病気に対する脆弱性における性差は、社会規範や習慣によって形作られている。  私たちの社会は、こうした性差をさらに広げることを決意したように見えることが多々ある。たばこのマーケティングは、少なくとも1980年代までは無骨で独立心旺盛な男性というイメージ作りで、男性をターゲットに展開されていた。今日、喫煙は中国やその他アジア諸国で男性らしさを演出するものとしてだけではなく、ビジネス関係や男性同士の絆の構築においてほぼ不可欠なものとみなされている。世界の保健衛生における男女格差の問題の多くは、あらゆる部門で女性の代表者が少ないことに起因しているが、このようなステレオタイプの強化は、男女どちらにとっても問題だ。  また、健康面での問題は男性により重くのしかかるにもかかわらず、男性はそれについて何もしない傾向が強い。多くの研究において、女性の方が圧倒的に医療相談をする傾向が高いことが示されている。さまざまな種類のがんにかかるリスクも男性の方が高いが、米国で最近行われた研究では、女性と同じくらいの頻度で医療機関を利用する男性は、すでにがんの診断を受けた人に限られていたことが示唆されている。  つまり、新型コロナウイルスへの感染のしやすさにおける性差は、私たちがずっと知りつつも、取り組まずにいた問題を思い出させるものなのだ。世界保健機関(WHO)は長年、「原因と対策をいっそう把握するために男女別の統計値を出す」ことを推奨してきたが、かなり不完全な統計値でさえ、それができていないことを反映している。生物学的理由、文化的理由、どちらから見ても、病気による影響は男女で異なることが多い。しかしこれがなぜかを理解するときまで、私たちは誰もが敗者なのだ。【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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