検察の立証が「法廷で崩れた」“揺さぶり虐待”裁判 家族が犠牲になった3年…「引き返す勇気を」
相次ぐ「無罪判決」…問われる検察の姿勢
今回の母親の裁判も、SBSの症状とされてきた急性硬膜下血腫や網膜出血があるとして捜査はスタートしていますが、弁護側が小児脳神経外科医の意見をもとに「軽微な外力で急性硬膜下血腫が生じた可能性」を具体的に指摘すると、たちまち「揺さぶり」の根拠は崩れていきました。 検察側の小児科医などは古い血腫の位置についての意見を変更するなど、検察立証が法廷で瓦解していったのです。 検察側医師の証言だけでは立証困難と考えたのでしょうか。 検察は母親が虐待する動機があったと立証しようとしたのですが、それには母親が行政に育児相談をしていた記録が用いられました。 出生後から長男はミルクの飲みが悪く、体重が増えなかったり、肺炎で入院することもあるなど、母親が長男の育児に不安を持っていたのは事実です。 しかし、育児にストレスがあったから虐待を疑うのであれば、育児に悩む親が相談しにくい環境を作ることにならないでしょうか。 今回の判決でも「母親が育児につき相当のストレスを感じていることはうかがわれるものの、そのことをもって暴行に及んだと認定することはいうまでもなく飛躍がある」と検察の主張をたしなめています。
乳児に原因が分からない重篤な症状が見られた場合、虐待の可能性もあるとして捜査することは必要です。しかし、「虐待ありき」で捜査や裁判を進め続けることは、それにより「不幸な家族」を生みます。
裁判が3年もの長期にわたったことで、夫婦は今も長男と一緒に暮らすことができていません。 母親が逮捕・起訴されたのは2017年12月です。 この3年の間に「揺さぶられっ子症候群(SBS)」をめぐる裁判には大きな動きがありました。 今回の裁判でも、法廷で「揺さぶり」の根拠が不十分であることが次々と明らかになっていきました。
どこかで引き返すことはできなかったのでしょうか。
カンテレ「報道ランナー」2020年12月4日放送より
カンテレ