“黒”専門アパレル「Macqlo(マックロ)」絶好調 服の悩みを塗りつぶせ
「スーツに見える作業着」でアパレル業界に新風を巻き起こしたオアシスライフスタイルグループが、今度は黒色に特化したアパレルブランド「Macqlo(マックロ)」を立ち上げ、話題を集めている。「服選びは面倒だけどこだわりはある」という男性の潜在ニーズを捉え、高機能な素材で黒1色のみを展開。渋谷パルコとグランフロント大阪のポップアップストアでは、目標を大幅に上回る売り上げを達成した。2024年6月には東京都渋谷区に初の常設店をオープン。全国から黒コーデの男性客が訪れる。なぜ、同ブランドが人気を集めるのか。アパレルの常識を覆す戦略を探った。 【関連画像】体のラインを拾わないボックス型シルエットの半袖Tシャツ。左胸にはポケット、左肩には着脱しやすいファスナー付き。木村拓哉の公式Youtubeチャンネルでも紹介された。1万1000円 ●“洋服に振り回されないブランド” ハイブランドやストリートブランド、飲食店などが並ぶ渋谷の新たなランドマーク「MIYASHITA PARK」の南館2階。色とりどりのアイテムを取り扱うフロアでひときわ目立つのが、オアシスライフスタイルグループ(東京・港)のアパレルブランド「Macqlo」の常設直営店、第1号だ。 黒とシルバーを基調とした店内に並ぶのは、黒のTシャツやパンツ、ブルゾン、ジャケット、バッグ、帽子など。黒以外のカラーは一切置いていない。 取り扱うブランドは、マックロのほか、同社の作業着スーツブランド「WWS」、さらにはグラミチ、グレゴリー、コンバース、サンスペルといった他社ブランドまで、機能とデザインを兼ね備えた国内20以上がそろう。 什器(じゅうき)で囲った2坪のスペースには、ショップインショップとして黒T専門店「#000T(クロティ)」が出店する。同店は、東京・千駄ヶ谷にある白無地Tシャツ専門店「#FFFFFFT(シロティ)」のオーナー、夏目拓也氏との共同プロデュースで実現したもの。 夏目氏が東京都新宿区歌舞伎町で営業していた黒T専門店が、2023年9月に惜しまれつつも閉店。それを聞きつけたオアシスライフスタイルグループの関谷有三社長が、夏目氏に声をかけて、店が復活した。Tシャツへのこだわりが強い夏目氏がセレクトした黒無地Tシャツを、常時約40型展開する。 マックロは、男性の私服選びの悩みを解消するために開発されたブランドだ。「ファッションの悩みなんて、すべて真っ黒に塗りつぶせ」をコンセプトに、機能性や着心地、シルエットにこだわりがある30~40代の男性をターゲットにしている。 発案したのは関谷社長自身。「40代になって毎日着る服を選ぶことも買いに行くことも面倒になり、気づけば黒ばかり着ていた」と言う。 ところが、黒い生地は何度か洗濯するうちに色がくすんでしまい、逆に格好悪く見える。そこで、「人々が服に振り回されず、質の高い生活を選べるように、機能的で長持ちするブランドをつくりたい」と着想したのが、ブランド立ち上げのきっかけとなった。 市場ニーズを把握するために行ったアンケート調査でも、洋服を買うときに黒いアイテムを選ぶ傾向があると答えた男性は全体の85%にも及び、需要の高さを裏付けた。同社で展開する作業着スーツでも、黒から完売することが多く、「黒がないなら買わない」という顧客は少なくないという。体形をカバーでき、飽きない色というのも、黒が選ばれる理由のようだ。 ●10年着られるから「店に来なくてもいい」 色を黒に特化しただけでなく、展開するデザインも絞り込んでいる。 24年春夏物商品は、Tシャツ、パンツを中心にわずか9型からスタート。一般的にアパレルショップでは、売り上げを増やすためにカラーバリエーションやシーズンごとのトレンドアイテムを幅広くそろえる傾向があるが、マックロはその逆だ。あえて絞り込むことで、不良在庫や在庫消化のためのセールの乱発、廃棄などアパレル業界が抱える問題も解決できるのではないかと考えている。 型数を減らす代わりに商品開発には時間をかけ、徹底的にこだわり抜いた。素材はWWSで独自開発した機能性素材「アルティメックス」を使用。やや光沢があり、ストレッチ性やはっ水、速乾、耐久性に優れているのが特徴だ。 デザインのディテールにも長く着られる工夫がある。例えば、着脱しやすいようにTシャツの左肩に付けられたファスナー。一般的な綿の丸襟Tシャツだと首回りがリブ素材になっていて着用しているうちに生地が伸びてくる。 そこで身ごろと同素材を使用し、金具の見えないファスナーを付けることで伸びない襟にした。着るときに面倒と感じる人もいるだろうが、5年後、10年後も着られることを優先する。 また、今秋冬用に開発したハーフコートには、保温性と通気性に優れた高機能フリース「ポーラテック」を使用。アルティメックスとの3層構造で暖かくて軽く、しかもシワになりにくく洗える最強の防寒着が完成した。 ライダース型アウターは、革ジャンに手を出せなかった男性向けに、柔らかな素材でライダースを再現。重厚感のあるファスナーなど革ジャンのデザインにこだわった。 「いま展開しているアイテムは、これさえあれば、生涯服は買わなくてもいいというぐらい心血を注いで造ったもの。だから、一通りそろったら店に来なくてもいい」と関谷社長は言い切る。 10年間は着られる自信があるとしており、買い替える必要がないと考えているからだ。通常のビジネスなら買い替え需要を見越してものづくりすることが多いが、関谷社長の考えはその逆。「服選びの悩みを持つ人の賛同を得られれば商売になるはず。マックロでは、男性の服選びの新しい常識をつくり上げていきたい」と、ブランド開発の本音を語る。 そのビジョンやコンセプトを世界に向けて発信していくため、外国人観光客も多く訪れるMIYASHITA PARKに旗艦店をオープンした。 オリジナル商品の価格はTシャツ9900~1万3200円、パンツ1万6500円、アウター1万7600~2万6400円(いずれも税込み)。高機能素材を使い、こだわって造った商品ではあるが、手ごろな価格設定も反響を呼ぶ要因の一つになっている。WWSと同様にマックロの定番商品も計画生産し、6年は売り続ける予定だ。