大雨原因は異例の連鎖 東北、北陸では「あり得ない」熱い空気塊
3日から東北、北陸地方を中心に大きな被害をもたらした大雨は、「異例の連鎖」で起きていた。気象庁によると、勢力の拮抗(きっこう)した二つの高気圧にはさまれて身動きが取れなくなった前線に、東北や北陸では「あり得なかった」非常に暖かく湿った空気塊が流入し、山形や新潟などで観測史上最多となる猛烈な雨を降らせた。同庁は「同様の大雨が今後も続く可能性がある」と警戒を強める一方、発生メカニズムの解明に乗り出した。
気象分析担当者も驚く
気象庁は3日から4日にかけて、約1年ぶりとなる大雨特別警報を山形、新潟の両県で発令した。気象分析の担当者が驚いたのは、前線が停滞した地域の「相当温位」が354K(ケルビン)と解析されたことだった。 相当温位とは、雨雲が発生する必要な高さ、上空1500メートル付近の空気塊の熱量を指す。夏に「激しい雨」(1時間30ミリ以上)を降らす相当温位は330K程度とされるが、354Kは「猛烈な雨」(80ミリ以上)を降らす高さで、九州などの多雨地域でも「めったにない」現象となった。 この空気塊は熱帯低気圧に変わった台風6号を起源とするもので、東シナ海付近の上空にあったという。
高気圧に挟まれ前線停滞
さらに「予想外」だったのは、前線の北側に張り出したオホーツク海高気圧と南側の太平洋高気圧の勢力が拮抗し、南下を予想していた前線が停滞したことだった。結果、同じ場所で次々と大雨が降る線状降水帯が発生。4日朝までの24時間雨量が新潟県関川村560ミリ、村上市410ミリ、山形県飯豊町306・5ミリ、石川県白山市108ミリと観測史上最多となり、河川氾濫などを引き起こした。 前線はその後、ゆっくりと南下しながら西日本各地で大雨を降らせ、5日早朝には太平洋へ抜けた。 同庁天気相談所の担当者は「珍しい現象が重なる複合的な要因でこの豪雨は起きた。ただ、本州の日本海側で前線が通過するのは珍しくない。同じような大雨は、今後も起き得る」と語った。