Jリーグ初放映で大失敗…外資系のDAZNが“日本式の謝罪会見”を完璧に乗り切れた舞台裏
こうした大トラブルが起きたときの対処こそ「天日干し経営」(編集部注/筆者が唱えたJリーグの経営理念。外部への情報公開と内部の風通しの良さを基本とする)の真価が問われる。 ● いつでも有事対応ができるよう トップは常に白シャツを着用 すべての情報が集まって原因を特定するまで待って会見をするのか、技術の専門家に答弁の対応をお願いするのか、はたまた弁護士に代弁してもらうのか。瞬時の判断が求められる。 私たちは、まず英国人のCEOジェームズ・ラシュトンと絶対に逃げないことを決めた。また、どこまで原因が究明できているのか、どこから原因が不明なのか、そうした真実も貴重な情報であり、すべてを天下にさらし、つまびらかにすることを覚悟した。 4日後の3月2日は外国人と行なった世にも珍しいお詫び会見となった。会見が始まる前の控室で、ジェームズらに日本のお詫びの作法を教えた。「ジェームズ、背筋を伸ばして、腰から上体を折り、頭を下げてから5秒間そのままだよ」と。
会見は、冒頭私が経緯を説明し、ジェームズ・ラシュトンともう1人のDAZNスタッフが壇上に立った。頭を下げるお詫びのスタイルに慣れていない彼らは、多少ぎこちなさはあったが、誠実に対応した。壇上では2人がお互い5秒カウントしているのがわかる。 彼らの説明の趣旨は「見逃し配信を自動的に起動するコンテンツ制作ツールが、複数の試合を同時に処理し始めたが、システムの一部に不具合があったため、結果データベースの破損、さらにはプラットフォームに障害を起こした可能性がある」というものだった。逃げない誠意は十分伝わったのではないかと思う。 大きなトラブルで幕を開けたDAZNではあったが、その後多くのファンに支えられ、改善を重ね今日に至っている。ネットでは彼らの迅速で誠実な姿勢を評価するコメントさえ見られた。今ではDAZNはサッカー中継にはなくてはならない存在にまでなったのだ。「天日干し経営」は有事の際にその真価が問われるものだ。 私はJリーグ在籍中の8年間に着用したワイシャツは、すべて白シャツだけで通した。それは、いつ勃発するかわからない有事の際にいつでも会見ができるようにという覚悟そのものだった。
村井満