西武3位浮上を演出した異色の2人…打者転向2年目の川越誠司が初本塁打&3年目”サブマリン”与座海人が初勝利
完璧すぎる手応えが、無意識のうちに左手を動かした。美しい放物線を描いた打球の行き先がわかる前に、埼玉西武ライオンズの川越誠司は一塁へ走りながら小さなガッツポーズを作っていた。 「打った瞬間、ホームランだと思ったぐらい(手応えが)よかったです。最近はなかなか打てなかったので、真っ直ぐが来るだろうと思って、割り切ってフルスイングでいきました」 本拠地メットライフドームに千葉ロッテマリーンズを迎えた23日の8回戦。1-2とリードされた2回裏二死三塁の場面で、9番・ライトで8試合ぶりに先発した川越が左打席に立った。この時点で22打数2安打の打率.091。それでも、辻発彦監督を含めた首脳陣は期待を込めて先発に指名していた。 「(相手の先発が)真っ直ぐとフォークというところで、真っ直ぐに強い川越を使ってみよう、と」 開幕3連勝中のロッテの先発右腕、岩下大輝は重くて速いストレートとフォークボールを軸にピッチングを組み立ててくる。ストレートに狙いを絞る作戦のもとで木村文紀ではなく、上半身を強烈に捻るようなフルスイングとパンチ力を身長174cm、体重80kgと決して大柄ではない身体に搭載した川越に白羽の矢が立てられた。そして、鮮やかに期待に応えてみせた。 ボールが2つ先行した後の3球目。外角低目に投じられた148kmのストレートを迷うことなく振り抜く。快音というよりは剛球とバットが正面衝突した末に生まれる、何かが潰れるような音を残した打球が、ファンの観戦が解禁された後も閉鎖されている右中間スタンドの上段に突き刺さった。 投手と4番の二刀流で活躍した北海学園大学から2015年のドラフト2位で、投手として入団して5年目。しかし、一軍登板がないまま2018年9月から打者へ転向。3年目で初の開幕一軍入りを果たした27歳の川越にとって30打席目で飛び出したプロ1号が、西武を3-2の逆転勝利へと導いた。