「お金の心配」をしながら亡くなる患者も…コロナ禍で浮き彫りになった、アメリカの「過剰な医療行為」と迫られる変革
医療機関の変革が迫られる
話がそれましたが、実はコロナ禍で医療機関は過剰医療行為だけではなく、不透明で高額な費用などの「医療機関の経営方針」の変革が迫られているようです。 コロナ禍では多くの人が医療機関を避けるようになりました。感染を恐れていることはもちろんですが、失業し医療保険も失ったという人が多いのはアメリカならではの問題です。 “British Medical Journal”に掲載した医学研究をまとめた論文の中(※2)で、オーストラリアのボンド大学のレイ・モイニハン教授らは、「アメリカでは、医療機関に足を運ぶ人が半分になった」と述べています。それにより、心臓病など深刻な症状がありながらも見逃してしまい、亡くなったケースも少なくないといいます。 その一方で、定期検査や医師とのアポイントメントを延期したことで、過剰な医療行為による危害を免れた患者もいるようです。また患者自身が、今までの検査や診断が過剰だったのでは? と見直すきっかけにもなっているようだということです。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最前線で働く医療従事者が、寝る間もないほどCOVID-19感染患者の手当てで大忙しの一方で、こうした一般患者の病院離れが顕著となり、最も儲かる手術や検査が半減してしまっているようです。これにより、多くの医療機関は経営困難に陥っているといわれています。また、コロナ禍で広まった「診察のオンライン化」が定着することで、患者の選択肢が広がり競争も激しくなっているようです。 フォーチュン誌では、同社が開催した今後の医療機関を議題にしたバーチャル会議の意見をまとめています。「コロナ禍でのこうした医療機関の困難は、今までの古い経営方針を改め、透明性の向上や医療費の軽減という消費者(患者)の要望に耳を傾け、より多くの人々が必要とする医療を提供していくことに集中するよう方向づけることになった」との意見があります(※3)。 患者への治療や費用の透明性の向上、経済的な負担の軽減は個人的にはまだ実感していませんが、今後そうなることを願うところです。 あるアメリカの看護師が、毎日COVID-19で亡くなる患者を看取るなかで「医療費支払いの心配をしながら亡くなる人をみるのが、なにより辛かった」と話しているのをどこかで読みました。つくづく日本の医療保険制度は恵まれていると思う今日この頃です。 参考 (※1)CNN BUSINESS“Needless medical tests not only cost $200 billion, they can do harm” (※2)Ray Moynihan, assistant professor, Minna Johansson, director, Alies Maybee, patient partner, Eddy Lang, professor, France Légaré, Canada research chair in shared decision making and knowledge translation“Recovering health systems can prioritise genuine need” the bmj (※3)FORTUNE “4 ways the coronavirus pandemic will change hospitals”
美紀 ブライト