ソフトバンク、株主優待コストに10億円 それでも“元が取れる”と見込むワケ
「株式投資を、より身近に」――。ソフトバンクは株式分割を行い、2024年10月から同社の株を「10分の1」の価格で買えるようになる。これにより、同社株式の最低投資金額は現在の約20万円から2万円程度に引き下げられる見込みだ。 【画像】ソフトバンクの株主の分布状況。個人投資家の所有比率は約20%となっている この動きは、2023年7月にNTTが実施した株式分割に続くものだ。NTTの株式分割後、個人株主数が大幅に増加したことで注目を集めている。ソフトバンクもこの潮流に乗りつつ、さらに株主優待を新設することで、個人投資家、特に若年層の取り込みを狙う。
新NISA時代の“若手株主争奪戦” NTTに続く大手通信の挑戦
ソフトバンクは2024年9月30日を基準日として、普通株式1株を10株に分割する株式分割を実施する。同社株式の投資単位を大幅に引き下げることで、個人投資家、特に若年層の取り込みを狙う。 現在、約2000円前後で取引されているソフトバンク株は、分割後には200円程度になる見込みだ。100株単位で売買するルールを考慮すると、最低投資金額は現在の約20万円から2万円程度まで引き下げられることになる。 ソフトバンク総務本部副本部長の吉岡紋子氏は、「10~30代の単身世帯の1カ月当たりの貯蓄可能額が、3万6000~3万7000円程度であることを考慮した」と分割比率の根拠を説明する。毎月の貯蓄の範囲内で100株単位の株式投資ができるレベルを目指したということだ。 現在、一部の証券会社では1株単位での売買サービスも提供している。東京証券取引所でも1株単位での取引に関する議論が行われている。一方でこうした制度変更がなされても「議決権については現状のままだろうと考えている」と吉岡氏。こうした状況を踏まえ、ソフトバンクは議決権まで各株主に保有してほしいという考えの下、株式分割を決定した。 今回のソフトバンクの株式分割は、通信業界における「若手株主争奪戦」の新たな一手となりそうだ。2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)を追い風に、若年層の投資家獲得に向けた動きが活発化している。 「株主の年齢構成を見ると、30代以下の比率が13%程度にとどまっている。人口構成比で見ると3割程度あるはずなので、まだまだ伸びしろがある」と、吉岡氏は分析する。 これは、2018年のIPO(新規株式公開)時から続く課題だという。「IPO時点では比較的シニアの方々が余剰資金で購入し、中長期で保有してもらっている。しかし、上場以来、株主数は少しずつ減少傾向にあった。シニアの株主の方々が利益を確定させている」と吉岡氏は分析する。 同じような狙いを持つのは同業のNTTだ。NTTは2023年7月に1株を25分割する株式分割を実施し、大きな成果を上げている。NTTの個人株主数は105万人増えて176万人になり、1年で2.5倍になった。最低投資金額が40万円台から1万円台に下がり、個人が投資しやすくなったことが、株主数が増えた大きな要因とみられる。 この成功例を横目に、ソフトバンクも独自の戦略を練っていた。「実は、NTTが株式分割を発表した2023年5月の時点で、われわれは既に検討を進めていた」と吉岡氏は明かす。分割および優待新設と結果的には似た内容となったが、NTTに対抗した施策ではないとしている。