なぜ女性DV問題でJ1仙台解雇のMF道渕諒平を韓国Kリーグ2部の忠南牙山FCは獲得したのか?
仙台市で生まれ育った道渕は、中学年代からベガルタのアカデミーに所属。明治大学をへて2017年シーズンからヴァンフォーレ甲府へ加入したが、同年7月に都内で昨年時とは別の女性に対して暴力を振るったとして逮捕され、処分保留のまま釈放された後の8月31日に不起訴処分となった。 当時は警察発表はされなかったものの、事態を重く見た甲府が道渕の拘留中に逮捕された事案を発表。不起訴処分になった翌日の9月1日には残るシーズンの出場および活動停止、3ヵ月間の減俸20%、年内いっぱいの社会貢献活動の実施を言い渡したことも発表されていた。 所属クラブのない状況から再出発を期していた道渕だが、度重なるDV行為が明るみに出るなど、ピッチの外で抱える問題もあって国内で新天地を探すのは難しかったのだろう。忠南のウェブサイトは、1月下旬に渡韓した道渕がトレーニングにテスト参加していたとも伝えている。 忠南の前身である牙山ムグンファFCは韓国警察を母体とするクラブで、兵役期間中のサッカー選手をプレーさせていた。 2019年11月には市民クラブへの転換を発表し、警察庁サッカー団を意味していた「ムグンファ」をクラブ名称から削除。いま現在の忠南牙山に変えたなかで、スウェーデンやオーストリアなど、韓国籍をもたない外国籍選手も獲得するようになった。 しかし、新体制で臨んだ昨シーズンはKリーグ2部で最下位に終わった。今シーズンの浮上を託す起爆剤として道渕の獲得を決めただけでなく、蔚山現代時代に忠南へ期限付き移籍後、飲酒運転で摘発されていながらも公式戦に出場し続けていたDF李を再び獲得した。
ただ、ピッチの外で問題を起こした2人を獲得する上で、忠南は「社会的な物議を醸した過去は否定できない」とウェブサイト上で明言。その上で2人と契約を結んだ理由をこう説明している。 「クラブの内部でも深みのある議論と、多角的な検討を積み重ねてきた。加えて、トレーニング期間中に2人の態度を継続的に見てきたなかで、面談などを通じて確実な変化を感じ、社会的に問題を起こして選手およびクラブの品位を落とす行為はしないと、今後に向けて確信がもてたので契約に至った。彼らも過去の過ちを反省し、模範になるように努力すると話しているし、クラブとしても選手全員に対する教育を進めていくなかで、事件および事故発生の防止に最善を尽くしていきたい」 10チームで争われるKリーグ2部は今週末に開幕し、忠南は27日に敵地で全南ドラゴンズと対戦する。再出発へのチャンスを与えてくれた忠南への感謝の思いと、韓国の地で成功してみせるという誓いとが込められているのか。道渕は自身の公式ツイッター(@ryoheimichi)のアカウント名に、日本語に訳せば「リョウヘイ」となるハングルを「道渕諒平」と併記する形ですでに追加している。 (文責・藤江直人/スポーツライター)