長澤まさみ&早見あかり、『シン・ウルトラマン』カトクタイ女性コンビを直撃「みんなすごく仲良かった!」
1966年の「ウルトラマン」放映以来、ワールドワイドな人気を誇るウルトラマン。55年以上にわたってシリーズが続く、日本を代表するキャラクターを新たな視点で映画化した『シン・ウルトラマン』が公開中だ。樋口真嗣監督、庵野秀明企画、脚本による本作に出演した長澤まさみと早見あかりが演じたのが、禍威獣(カイジュウ)に対処するため組織された禍特対(カトクタイ)のメンバー。知力や分析力で巨大な脅威に挑む知性派ながら、どこか“普通じゃない”パーソナルな持ち味が魅力で、彼らのチームワークも本作の見どころになっている。自身の役を「好奇心旺盛でとにかく前向き」(長澤)、「頭がよすぎてクセが強い人」(早見)と分析する2人が、ウルトラマンとの出会いから映画の舞台裏、完成した映画を観た時の衝撃まで、気のおけない関係性がうかがえるくだけた雰囲気のなか、たっぷり語ってくれた。 【写真を見る】もはや芸術!長澤まさみ、早見あかりの気品あふれる美のツーショット ■「オファーを受けた時は、やらないっていう選択肢はなかったですね」(早見) 日本各地にカイジュウが出現している日本に突如現れた、銀色の巨人“ウルトラマン”の活躍が描かれる本作で長澤が演じたのは、元公安調査庁の分析官・浅見弘子、早見の役は元文部科学省の汎用生物学者・船縁由美。ともにカトクタイへの出向組で、それまで培ってきた知識や能力をフル稼働してカイジュウやウルトラマンに向き合っていく「ヒーロー対怪獣」という図式にとどまらない、“はぐれエリート部隊”カトクタイの活躍も本作の見どころだ。 ――まず『シン・ウルトラマン』のオファーを受けた時の率直な感想をお聞かせください。 長澤「そうですね、『シン・ゴジラ』を観た時に、いま実際にゴジラが存在していたら…という世界観にすごくハマったんですよ。『シン・ウルトラマン』のお話を頂いた時も、期待感がすごくありました。実際に台本を読んでみるとそれだけでなく、ウルトラマンはゴジラより神秘的な要素があると思ったので、物語を進めていくうえでの“象徴”としての部分、圧倒的存在感も魅力的だと感じました」 早見「最初はうれしかったしやりたいなという気持ちと同時に、本当に私で大丈夫かなっていう不安もあって…たぶん後者のほうが大きかったかもしれないですね。ビッグタイトルだし、ほかのキャスト陣やスタッフ陣の皆さんのお名前だったり、ビビるには事足りなかったので(笑)。ドキドキする要素がいっぱいあったんですけど、やらないっていう選択肢はなかったですね」 ――ウルトラマンは憧れの存在として一度は夢中になるキャラクターですが、お2人はどういう形でウルトラマンに出会ったのでしょうか? 長澤「兄がいるんですけど、『ウルトラマン』シリーズのソフトビニール人形を持っていたんです。それで子どものころに、よく兄と一緒に遊びました。でも人形同士で戦うんじゃなく、リカちゃん人形と同じ感じでウルトラマンや怪獣で遊ぶという、ちょっと間違った使い方をしてました(笑)。強い思い入れはないですが、『いつのまにか知っていた』という存在ではありました」 早見「私は姉妹なので、『ウルトラマン』を観て育ったとか生活の一部にあったという環境ではなかったんですが、それでも小さなころからウルトラマンは知っていたし、『ヒーローでかっこいい』というイメージは持っていました。ウルトラマンとの出会いがいつだったのか覚えてないけど、私もやっぱりいつのまにか頭に入っていました。深く知らない人でも知っている、圧倒的な存在という感覚ですね」 ■「浅見って結構ふざけたキャラだなと思った(笑)」(長澤) ――個性的なメンバーが集まったカトクタイの一員を演じていますが、演じられたキャラクターについてお聞かせください。 長澤「浅見弘子というキャラは、快活で、そしてエリートなわけで人よりなにかを知りたい欲が強かったり、責任感が強かったりという。好奇心旺盛な人間だなという印象はありました。あとは、とにかく前向きな人なのでそんなところは大事に演じてました。でも完成した映画を観たら、浅見って結構ふざけたキャラだなと思った(笑)」 早見「でもふざけてる自覚はないっていうか。前を向いてるだけなのに、それが一生懸命すぎて『大丈夫か?』と思われてしまうっていう。私の演じた船縁由美みたいにわかりやすい変な人ではなかったよね」 長澤「そう、そう(笑)」 早見「船縁さんは誰が見たって、『ちょっと変わったクセのある人』みたいな感じじゃないですか(笑)。脚本を読んだ時点で、最初からそんな予感はあったんですけど、衣装合わせであのトレードマークの眼鏡を着けると決まった時、『わかりやす!』って(笑)。でも浅見さんは、見た目は普通でセリフも普通なんですけど、熱量がすごすぎる人だったっていう感じ」 長澤「うん。変わった役だった(笑)」 早見「でもカトクタイ全員に対して言えるのが、頭がよすぎるがゆえあぶれた人たちだってこと。所属していた本当の母体はあるけど、そこで頭ひとつ抜き出ちゃった人たちの寄せ集めで、ひとつに集められたことですごい力を発揮するという。みんなお互いのことをすごく信頼している関係性が、すてきだなって思った」 長澤「印象的だったのは、あかりちゃんと有岡(大貴)君。研究者の役だったので、難しいセリフをさらりと言わなくちゃいけないんです。でも、2人ともセリフを間違えないし、本当に堂々と演じてたよね」 早見「いままでの人生で、見たことも聞いたことも読んだこともない、まして口に出したことがない言葉がたくさんあったんですよ。でもそれは私にとってのことで、船縁さんにとっては当たり前のことでしかないから、それがうまく伝わればいいなと思って」 長澤「大変だったと思うけど、かっこよかったよ。役にぴったりだったし、声質からしてもうこの役の声だよねってイメージ。現場で本当にはまっていたなって感じた」 ■「映画のなかでも外でも、みんな一緒に戦っていた感じでした」(長澤) ――映画を観ていると、カトクタイのチームワークのよさを感じました。現場もアットホームな雰囲気だったのでしょうか? 長澤「仲良かったです、本当に。だよね?(笑)」 早見「すごく仲良かった!カメラの外でも信頼関係を培ったことで、役のうえでのチームワークのよさが更にうまく出たんじゃないかな」 長澤「私は物語と同じで途中から合流したんですよ。もうその段階でみんな仲良くなってて、輪ができてる感じがありましたね。西島(秀俊)さんが率先してみんなをまとめてくれたんです。カトクタイはそれぞれ担当を持っているので、みんなが噛み合っていないと動きが取れないんです。そのチーム感みたいなものも作品の見どころですね。撮影は1日が本当に長かったので、時間をたくさん共有していた分、あかりちゃんに対しても、西島さんや有岡君、斎藤(工)さんに対しても、日々というより秒単位で信頼が増していくというか。映画のなかでも外でも、みんな一緒に戦っていた感じでした」 早見「チーム感がすごかったです。本当に。」 ――実際にはいないウルトラマンやカイジュウに対するリアクションなど、合成カットも多かったと思いますが演じていてどうでしたか? 長澤「私たちは防護服を着てウルトラマンを見に行くシーンが多かったんですけど、お互いにセリフが聞こえなくて、合成じゃなくてもブルーバックで撮ってるのと同じ感覚だったよね」 早見「そうですね」 長澤「合成の多い特撮の難しさでもあるんだと思うんですけど、お芝居をしていくうえで一緒にいる俳優同士の息が合ってないといけない。でも、息を合わせるにしても相手の姿が見えなかったり声が聞こえないと、どうしても手探りになるというか。その状況をそれぞれが察知して動かなきゃいけないという意味では、なかなか特殊な現場だなと思いました」 早見「よく覚えているのがクランクインの日だったか、撮影が始まってすぐに、私と西島さんと有岡君のシーンで『ここら辺にこれ位のサイズのこういうのがいて、1、2、3で倒れます』、という説明を受けて臨んだ撮影があったんです。みんな自分たちのリズムで、1、2、3で視線を動かしていったんですけど3人で『大丈夫かな、正解どれかな』って。西島さんがあたふたしながら『OK出たから、たぶんOKなんじゃないでしょうか』って言っていたり(笑)」 長澤「確かにそんな感じだった」 早見「本当に手探りだったので、どんな画になるんだろうって思っていて。だから完成した映画を観た時は、『すごい!こういうことだったんだ』って答え合わせができた感じ」 長澤「想像力を駆使しないといけないから、大変だったよね」 早見「一人でやればいいだけじゃなく、みんな同じものを見てることが大事だから。そのためにすごいディスカッションしましたよね」 ■「樋口監督は、本当に可愛らしいチャーミングなおじさん(笑)」(早見) ――樋口監督とのお仕事はいかがでしたか? 長澤「私は『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』以来なので、10年以上ぶりなんですよ。でも相変わらずというか、不思議なところを含めなにも変わらないなって(笑)。樋口監督は自分のためというよりも誰かのために映画を作っているんだっていう想い、奉仕の気持ちをすごく持っているんだと思います。だから映画を作るうえで、すごく優しいんですよ。俳優やスタッフさんにも優しいし、観客に対しても優しいし、誰に対しても優しいんです。その一方で代表としてのすごさ、こだわりというのも節々に感じさせる。監督のそういった部分を信頼して、みんなついていくんだなと思いながら現場にいました」 早見「私は樋口監督の映画に参加するのは初めてなんですけど、プライベートで、共通の知人を交えた食事会でご一緒したことがあったり、自分がやっていた番組でインタビュー取材に伺ったり、関わりはあったんです。いつかは映画のお仕事でご一緒できたらなと思っていたので、こういう形で実現してすごくうれしいですね。食事をしている時も『ご飯大好き』みたいな本当に可愛らしいチャーミングなおじさんで、イメージそのままの方で(笑)。撮影中もすごくおおらかで、俳優のやりたいようにやらせてくれるし、ずっとニコニコしていました。スタッフさんみんながそうですが、本当にウルトラマンを愛している人たちで、それが伝わってくる現場でした」 ■「観終えたあと、席からすぐには動けなかった」(長澤) ――完成した映画をご覧になった感想や見どころを教えください。 長澤「衝撃的すぎて、観終えたあとに席からすぐには動けなかったですね。物語のスピード感だったり、ウルトラマンとカイジュウたちの戦いのすごさもそうで、起こっている物事に対してちょっと自分が追い付いて行けなくて。目の前で起こっていることに、ただただ呆然とした感じでした。物語構造としては難しくはないんですけど、細部にこだわった設定というのがたくさんあって、いろんなメッセージも込められています。庵野(秀明)さんや樋口監督がいままで培ってきたもののすべてが詰まっている感じがして1回だけでは受け止めきれない。『ウルトラマン』というひとつの作品に収まり切らないものを観てしまったという印象なんですよね。映画体験としてもものすごく大きいものになったし、映画館に何度も観に行きたいと思いました」 早見「私の語彙力が乏しく聞こえてしまうんですけど(笑)、とにかくすごかった!圧巻でした。自分のこの興奮とか感動とかを、どう言葉で伝えるのが正しいのかわからないくらい。だから子どもみたいな感想ですけど、『本当にすごかった』というのが一周まわって一番適切かもしれません。本当は難しい言葉で、ちょっとかっこよく言いたいんですけどね。樋口監督が『1つの作品にこれだけの時間を費やしたのは初めて』とおっしゃっていたんですけど、観ていてその想いがバンバン伝わってきます」 長澤「あと『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』もそうだったけど、情報量がすごく多くて、いろんな要素がいっぺんに押し寄せてきた」 早見「とにかく情報量がすごくって(笑)。上映中はじーっと画面に見入っちゃうんですよ。一生懸命に観てるし聴いてるから、パワーをごっそり持っていかれました。それでも1回じゃまだつかみきれていない部分もある感じ。脚本で読んだことがある私ですら全部はつかみきれなかったので、たぶん観て下さる方々も1回ですべてを理解するのは難しいかもしれません。『シン・ウルトラマン』を楽しみにしてくださっているファンのなかには、何回も観に行くぞってやる気満々の方も多いと思いますけど、私も試写だけじゃ足りないから時間作って何度も劇場に行きたいなと思ってます」 取材・文/神武団四郎