渡辺謙さん、気仙沼で心をつなぐカフェを経営…次の10年の決意 #あれから私は
気仙沼港にほど近い一角に、黒いテントのような形をした特徴ある建物が建っています。東日本大震災後の2013年11月、復興支援の一環として渡辺謙さんがオープンしたカフェ「K-port (ケイポート)」です。渡辺さんは震災後すぐに支援のため被災地に入り、避難所を訪ね歩きました。そこで被災者の心の内に耳を傾け、時には背中をさすって励ましたのです。気仙沼では現地の方々と会話を重ね、何ができるか自問自答する日々でした。そこで生まれたのが人々の「心の港」となる「K-port」でした。 〈写真〉カフェ「K-port」のフェイスブックから。自ら接客に行う渡辺さん。コロナ禍前は朝食会やクリスマスディナーなども企画して喜ばれた。
人に寄り添うカフェを
いまも渡辺さんは忙しい仕事の合間を縫い、「2カ月に1.5回くらい」という頻度で気仙沼に通っています。 「震災から10年経つと、外部の人はもう節目を迎えたと思いがちですが、被災地の人にすれば結局は『日常が積み重なった10年』だったと思うのです。いいときもあれば悪いときもある、前に進んだときも後退したときもある。10年は『読点』ではあるけれど決して『句点』とは言えません。僕も少しずつ支援を続けてきたけれど、『いまも人々には受け止め切れないほどの思いがあるのだ』というのが実感です。これからもずっと寄り添っていくしかないと思っています」と渡辺さん。 〈写真〉屋根の形が独特でひときわ目立つ「K-port」の外観。夜はイルミネーションに輝く。
「K-port」に来ると渡辺さんはキッチンに立ってお皿を洗ったり、接客したりしながらいろいろな方と語り合います。マネージャーの小野寺亜希さんは「謙さんはスタッフを名前で呼び、『最近どう?』と声をかけてくださいます」と教えてくれました。 〈写真〉渡辺さんがお店に来られない期間は、直筆のファックスがお店に届き、入り口に飾られる。美しい墨文字のファクスは何冊ものファイルに整理され、訪れる人が自由に読めるようになっている。