F1メカ解説|レッドブルが投入した”サルノコシカケ”エンジンカバー。その狙いとは?
多くのF1チームが大型アップデートを施したマシンを持ち込んでいる今回のイギリスGP。レッドブルは今季のマシン『RB18』のエンジンカバーとサイドポンツーンが接合する部分のボディーワーク形状を大きく変更。人ひとりが腰掛けられそうな程度の”サルノコシカケ”(樹木に生える扇型のキノコの一種)のような段差が付けられた。 【動画】F1にドライバーの足元映す”ペダルカメラ”が復活。イギリスGPで試験導入開始 これによりサイドポンツーン上部とヘイローから後方に伸びるラインと、空気の通り道がふたつに分けられた。 興味深いことに、レッドブルの姉妹チームにあたるアルファタウリの『AT03』はシーズン開幕時点からエンジンカバーを地面に対して並行に伸ばすアプローチを採用しており、どこかレッドブルの”サルノコシカケ”もそれに似た雰囲気を感じさせる。
その狙いはビームウイングのさらなる利用
レッドブルはアルファタウリ同様に、冷却用に設けられたルーバーパネルをそれまでのサイドポンツーン上面から”サルノコシカケ”の上部に再配置。サイドポンツーン上面の気流をルーバーからの熱気で乱すことなく後方へ送ることができようになった。 つまりサイドポンツーン上面の気流はディフューザーへ向けられた落とし込み、もしくはサイドポンツーンエッジのバルジ部分を通ってフロアへと流れていく。 一方で、エンジンカバーのアウトレットを高い位置まで持ってくることで、ヘイローから後方へと流れる空気の通り道が作られた。これには、ビームウイングのパフォーマンスを上げる狙いがあると考えられる。
フロアパッケージにも変化
エンジンカバー以外にもレッドブルはフロアパッケージの最適化も進めており、ストレーキ部分やエッジ部分に修正を加えている。小さな変更ながらもフロア面の整流に寄与しており、全体としてのパフォーマンス向上に繋がっているはずだ。 レッドブルは今季、フロア全体を作り直さずに変更を加えられるように”パネル・セクション”を採用しており、状況に応じて柔軟に修正を行なっている。
キャリパー設計も見直し
またレッドブルはフロントブレーキアッセンブリーも、キャリパー設計の見直しを行ない、変更を加えてきた。近接する他コンポーネントによる過度な温度影響を防ぐ狙いがあるようだ。 写真は熱交換を管理するために表面処理が施されたキャリパーとブレーキディスクシュラウドだ。
Matthew Somerfield, Giorgio Piola