景気後退なのにマイナス金利解除へ? その「後」の金融政策はどうなる?
解除「後」も政策金利は据え置きか
日銀や内閣府のように景気の現状・先行きを説明する立場からすると、特殊要因を原因とする景気減速は先行きの回復を見込む根拠となるため、ある意味で都合が良いと思われます(内閣府で月例経済報告の作成に携わった経験を持つ筆者の主観)。こうした舞台裏の事情などから判断しても、マイナス成長によってマイナス金利解除が阻害される可能性は低いでしょう。 マイナス金利解除「後」の金融政策について、筆者は政策金利の据え置きを予想しています。その理由は、賃金上昇率が日銀の物価目標を上振れ方向に脅かすほど高まらないことに尽きます。2%程度の賃金上昇(いわゆるベア相当、毎月勤労統計における所定内給与に相当)が見込まれている2024年度に続いて、仮に2025年度が3%程度に加速するとの見通しが立てば、日銀は金融引き締めに動くとみられますが、残念ながらその可能性は低いと言わざるを得ません。むしろ日銀は物価上昇が落ち着くことで、それに応じて賃金上昇率が2022年以前の状態に戻ってしまうことを懸念しているのではないでしょうか。 労働分配率(利益をどれだけ労働者に還元したかを示す)が滑落するように低下していることから判断すると、企業の賃上げ余力は豊富に残存していると言えそうですが、それでも賃金がどんどん上がらない以上、政策金利もどんどん上がるパスは想定しにくいと考えられます。
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