ウクライナの越境攻撃、ロシア動揺狙い複数の選択肢から実行-当局者
(ブルームバーグ): ウクライナはロシアへの越境攻撃を先週始める前、同国指導部を動揺させプーチン大統領を不利に追い込むような攻撃を巡り複数の可能性を検討していた。この計画立案に詳しい西側当局者が明らかにした。
今年に入りウクライナ軍が守勢に立たされ、ロシア軍はわずかながらも前進を果たす中、ウクライナが1週間前にロシア西部クルスク州に奇襲攻撃を仕掛けるしばらく前から、越境攻撃は検討されていた。この当局者は匿名を条件に語った。
ウクライナ軍のシルスキー総司令官によれば、越境攻撃の開始以降に制圧したロシア領は約1000平方キロメートルに及ぶ。越境攻撃が2週目に入る中、クルスク州では住民12万人余りが避難し、プーチン大統領は対応に追われている。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、ウクライナによる制圧地域を約800平方キロメートルとしている。
米バイデン政権と欧州連合(EU)は、第二次世界大戦後で初となるロシア本土への外国軍による侵攻を容認する姿勢を見せている一方、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国はこれまでのところ判断を保留している。匿名を条件に語った西側の情報当局者によれば、ウクライナの指導部はクルスクでの作戦が十分進行するまで具体的な情報を共有しなかったという。
NATO諸国は今回の越境攻撃に懸念を抱いていないと、当局者は指摘。ただウクライナ側がロシア領の占領を続けられる可能性は低く、数週間かかったとしてもロシア軍はクルスクからウクライナ軍を駆逐するだろうとNATOはみているという。それでも越境攻撃は少なくとも、ウクライナがロシアに挑戦できることを示す上で極めて重要な行動だと、クルスクでの作戦に詳しいNATO当局者は述べた。
リスク
ドンバス地方東部からドニプロ川河口まで、1000キロメートル超にわたる前線で戦うウクライナ軍にとって、越境攻撃にリスクがあるのは明白だ。
当局者によれば、ロシア軍が戦略拠点に接近する中で経験豊富な部隊を戦闘から外して移動させれば、ウクライナ市民を一段と危険にさらす可能性がある。