「大腸カメラ」の拡大内視鏡・超拡大内視鏡で「早期がん」診断ができる仕組み【医師解説】
ここ数年、大腸がんの患者数が急増しているそうです。大腸がんは早期に治療すれば、ほぼ100%治ると言われており、早期発見が重要だと言われています。 そこで大腸カメラの「拡大内視鏡」「超拡大内視鏡」について、内視鏡医の工藤豊樹先生(東京内視鏡クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)はどんな検査? 大腸がん・腫瘍・ポリープが早期発見できる理由を医師が解説
編集部: 大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、どんな検査でしょうか? 工藤先生: カメラを使って、視覚的に大腸の内部を観察できる検査です。肛門から直径1cm程度のスコープを挿入して、大腸の全域を診ていきます。映像は画質の良いハイビジョンモニタで見られますので、小さな粘膜の変化も確認できます。 編集部: どんな病気がわかるのですか? 工藤先生: 粘膜の色や形状などを直接観察できるので、多くの情報を得ることができ、大腸ポリープや潰瘍性大腸炎、大腸憩室症など、さまざまな病気を知ることができます。 編集部: 大腸がんはどうですか? 工藤先生: 大腸がんのほとんどは、大腸ポリープが悪性化したものです。大腸ポリープは、大腸の粘膜から発生するものですが、これは大きく腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。 非腫瘍性のものががん化することはほとんどないのですが、腫瘍性のポリープのうち、悪性のものがいわゆる「がん」であり、また良性のものも、時間とともにがん化することもあります。また、ポリープからではなく、最初から「がん」として発生するケースもあります。 編集部: 良性や悪性かは、大腸カメラではわからないのでしょうか? 工藤先生: 「拡大内視鏡」「超拡大内視鏡」を使うことによって、かなりの高確率で良性か悪性(がん)かを判別することができます。
従来のものより高精度な大腸カメラ「拡大内視鏡」とは?
編集部: 「拡大内視鏡検査」「超拡大内視鏡検査」について教えてください。 工藤先生: どちらも、従来の内視鏡よりもさらに精度の高いカメラを使った検査です。拡大内視鏡は100倍、超拡大内視鏡だと520倍に拡大することができるので、大腸内視鏡検査よりさらに正確で高精度な診断ができます。 ポリープが良性か悪性かの鑑別などは拡大内視鏡や超拡大内視鏡を使うことによって、かなりの精度をもって診断できます。 編集部: 内視鏡検査時に分かるのはすごいですね。 工藤先生: 最終的な診断は、ポリープを切除したあとの病理組織検査で判明しますが、拡大内視鏡や超拡大内視鏡を使えば、病理診断とほぼ同等レベルの診断精度が得られますので、ポリープなどの治療方針もその場で決定することができます。 編集部: そんなに細かく見てもらえると安心です。 工藤先生: たしかにしっかり拡大できるので、「病変が小さくてよく見えなかった」ということはありません。ただし、これらはポリープを発見できたときの話です。 皆さんにお伝えしたいのは、大腸という臓器の特性上、内視鏡検査時にはどうしてもポリープ発見における「死角」ができてしまうということです。いくら拡大しても死角に病変があると、見つけられないというケースが実は少なくないのです。 編集部: もう少し詳しく教えてください。 工藤先生: 大腸の内部は、細かなヒダがたくさんあります。さらに「蠕(ぜん)動運動」といって、大腸全体がウネウネと動いているため、どうしても「死角」ができてしまうのです。 ですから、拡大内視鏡や超拡大内視鏡は、ポリープを「発見」するための道具ではなく「診断」するための道具と言えると思います。 そのため大腸ポリープを見逃さないために、普段から当院では「今、検査で異常なしであっても、大腸内視鏡検査は定期的に受けましょう」と言っています。