2025年、アジア太平洋地域の企業で起こる「AI活用」3つの動き
2025年、アジア太平洋地域(APAC)のビジネス環境に起こる大きな変化に、今から備えておこう。 この地域の企業においては、AI(人工知能)が牽引するさまざまな構想が、テクノロジーの進歩を後押しする推進力となるだろう。各社は1年ほど前から、生成AIをパイロット導入したり、実験的な試みを行ったりしてきた。そうした2024年を経て、企業は今後、地域特有の課題など、厳しい現実に向き合うことになるだろう。 各社は、AIやデータプライバシーに関する規制の厳格化、データや分析能力の制約、さらに進化を続ける顧客の要望といった課題に備える必要がある。 先進的な企業はすでに、自社のデジタル投資を精査し、ターゲットを絞り込んだデータおよびAI投資を通じて、より高い成果が得られるよう、懸命に努力している。こうした企業は、テクノロジーを取り入れて活用し、優位な立場に身を置き続けることが成功へのカギだと理解している。 しかも、あくなき探究を続けるこれらの企業は、独力で課題に取り組んでいるわけではない。強力な技術的専門知識、テクノロジー関連支出の増額、各企業に合わせたソリューションを提供する地域のテクノロジー提供業者との協力が組み合わさることで、アジア太平洋地域のビジネスリーダーは、規制当局と顧客、両方の要求を満たせるようになるはずだ。 これらの要件すべてを念頭に置いた上で、アジア太平洋地域の2025年を展望してみよう。間近に迫る「AIの時代」に勝利を収めるために、バリューチェーン全域にわたって企業が主導してきた変化の集大成的な1年になるはずだ。3つのポイントに絞って解説しよう。 ■アジア太平洋地域の企業のうち、現地データでトレーニングした大規模言語モデル(LLM)を用いてAIをローカライズするのは60% 2025年、アジア太平洋地域におけるAIイノベーション戦略は、多様な顧客のニーズ、規制関連の課題、言語の壁などによって、その形を変えていくだろう。インドや中国などの主要市場で事業を行う企業や政府機関の60%が、自らが属する地域で開発された大規模言語モデル(LLM)をグローバルなモデルと統合し、金融や教育、医療などのセクターをターゲットにすると予測される。 パブリッククラウドの比重が高い米国と異なり、大中華圏(中国大陸に香港、台湾、シンガポールを加えた地域)の大企業の90%はプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッド戦略を選択するだろう。 地域に根差したAI投資は、地政学的緊張によっていっそう後押しされるとみられる。たとえば中国では、AIコンピューティングの5%以上において自国で生産されたAIチップセットが用いられるとみられ、テクノロジー分野での自給率がさらに高まるはずだ。