Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「空飛ぶクルマ」実用化のキーマンは元・三菱の飛行機屋だった!

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
マイナビニュース

有人試験飛行の成功が話題を呼んだスカイドライブの「空飛ぶクルマ」。タクシーとしての利用などを計画しているそうだが、実用化のカギを握るのは、三菱重工業で「スペースジェット」(旧MRJ)のチーフエンジニアを務めた経歴を持つ人物だった。 【写真】2030年に登場予定の市販型がこれだ! 2020年4月にスカイドライブの最高技術責任者に就任した岸信夫氏は、三菱重工業で約37年間にわたり戦闘機や旅客機などの開発に従事し、中型旅客機「三菱スペースジェット」(旧MRJ)開発ではチーフエンジニアと技術担当副社長を歴任した経歴を持つ。スカイドライブに入ったきっかけは、同社が制作した2030年の空飛ぶクルマのイメージビデオを見たことだったという。 機体を開発する若い人材が多いスカイドライブには、型式証明の取得という高いハードルを実際に突破するための知見を持った人物が必要だった。岸氏は、その任に当たるのにぴったりな人物だ。先日の有人試験飛行では岸氏に会うことができたので、空飛ぶクルマの実用化について話を聞いてきた。 三菱の技術者から見た空飛ぶクルマの可能性 ――やはり、新しい飛行体の認可を取るというのは大変ですか。 岸信夫氏(以下、岸):大変です。前職のスペースジェットでもそうでしたが、レギュレーションというものが厳密に決められていて、その規定というのは結局、自分が「いい」と思うだけではダメで、「いい」と思っていることを国土交通省に説明して、「そうだね」といっていただく必要があります。そこで初めて、ある意味、「この機体は安全だよ」と国が保証書をつけてくれる形になってくる。一般の方が使うことを想定した「安全の保証書」。これが型式証明です。 今日の有人試験飛行は、飛行中のパイロットも、下で監視している人も、整備するスタッフも全員がプロフェッショナルで、よく訓練を受けた人間です。しかし、商用化されたものは一般の人が操縦するわけではなく、整備をするわけでもなく、ましてや、ここでやっているように、飛行状態を詳しくモニターするなんてこともありません。 ――今日飛んだ「SD-03」についてはどう見ていますか。 岸:例えば飛行機だったら、主翼が重量を支え、行きたい方向へ向かうために小さなパーツを動かしていく。ヘリコプターの場合は大きなローターがあり、それで精巧にプロペラの角度や回転数を変えて飛んでいます。一方、空飛ぶクルマの機体は普通の飛行機やヘリコプターとは違って、8個のプロペラで地上から浮き上がり、向きも変える。電動プロペラのそれぞれの回転数を微妙にコントロールすることで、安定した飛行ができているんです。一つ一つのプロペラを独立して制御・調整するのがとても難しい点です。 それからバッテリーがあり、コントローラーがあって、モーターを回す。その8個のモーターは全て独立していて、バッテリーも8個あります。モーターをコントロールするインバーターという部品があるのですが、そのコントローラーも8個ある。それらを接続する電線も、どこを通して、どういった取り付けにするかと考える。なかなか大変なんですよ。 ――なぜ8個なんでしょうか。 岸:もっと増やせばいいんでしょうけど、そうすると機体が大きくなって、停まる所の面積も必然的に大きくなってしまいます。我々が考える空飛ぶクルマのイメージからすると、せいぜい駐車場2台分くらいの所に降りたい。それは、クルマだからです。コンビニやガソリンスタンドで考えると、「大きな外車がくる」感じでしょうか。 機体はできるだけ軽くして、しかも見た目はカッコよくしたい。外国にも「eVTOL」(電動垂直離着陸機)はありますが、あんまりカッコよくないんですね。ここは大事な点で、「形は機能を表す」んです。現在は1人乗りの機体だけれど、将来、皆さんに本当に乗っていただけるときには、もっとカッコよくて小さくて、安全で安心な機体ができればなと思っています。 ――カッコにまでこだわっているライバルは少ないんですか。 岸:今日の機体はSD-03というプロトタイプですが、実際に飛んだ機体はプロペラガードが付いていないですし、モーターも少し違うものが付いています。将来的に開発する予定の「SD-XX」と呼ぶ市販型は、もっとカッコいい。そういうことを常に考えておくことが大切なところです。 操縦士にも話を聞いてみた 実用化したあかつきには自動運転を採用するというスカイドライブの空飛ぶクルマだが、今回の試験飛行では実際にパイロット(ドライバー?)が乗り込み、機体を操縦(運転?)していた。 有人試験飛行のパイロットを務めたのは、チーフエンジニアの安藤寿明氏だ。同氏は40年以上にわたって水・陸・空の機体を製作・飛行させてきたほか、30機以上のオリジナルドローンを製作した実績を持つ。フライトを終えた同氏にも話を聞いてみた。 ――搭乗しているパイロットに、飛行中の「音」はどう聞こえるのでしょう。 安藤氏(以下、安)乗ってみると、前の機体(SD-02)よりは静かになっています。フルフェイスのヘルメットをかぶっていますけど、ヘッドセットや耳栓はしていないので、音としては、ちょっとうるさいスポーツカーのような感じです。ヘリコプターなんかに比べれば、断然静かです。 ――機体の安定性についてはどうでしたか。 安:これも、以前に比べて格段に進歩しています。無線操縦の試験飛行なども重ねてきたのですが、この大きな機体でいかに水平安定が取れるかという点では、がんばってやってきた甲斐がありました。操縦もかなり楽でした。 ――今日の操縦方法はどんなものですか。 安:時速4キロほどで飛びましたが、今回の飛び方については自動操縦ではなく、スティック状の入力装置を使用しました。 ――今日の有人飛行に間に合うよう、体重も減らしたと聞いていますが。 安:(笑)空を飛ぶものを作る人はみんな分かっていると思いますが、軽量化は最も大事な部分です。同時に、それにはお金もかかります。機体については、我々の力で可能な限り軽量化しましたが、なお軽くできればいいということで、前回はちょっと太り気味だったかもしれないんですが、今回は10キロ減量しました。 ――乗った感じは、既存のものと比べてどうですか。 安:私はパイロットではなく、自分で操縦して飛ぶようになったのはスカイドライブに入ってからです。ただ、ラジコンヘリなどは長くやってきていましたし、実際に乗ったヘリコプターなどに比べると、低空での安定性ではこちらの方が上だと思います。 乗り心地に関しては、試験飛行を見ていただけれお分かりになるように、上下10cm以内の範囲でずっと飛ぶことができます。2~3mぐらいの低高度で、10cm以内の誤差で綺麗にゆっくり飛ぶのは、かなり難しいことではないかと思います。なので、乗っている感じとしては、高級車とまではいきませんが、乗用車で一般道の直線道路を走っているのと変わらない感覚です。 原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。

原アキラ

【関連記事】