第93回選抜高校野球 中京大中京、好発進 息詰まる投手戦制す /愛知
<センバツ高校野球> よくぞ粘りきった――。第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第6日の25日、中京大中京が、専大松戸(千葉)との接戦を2―0で制し、初戦を突破した。息詰まる投手戦に一歩も引かず、全員で手にした勝利。2010年以来11年ぶりの初戦突破で、センバツではトップの東邦(愛知)と並ぶ通算56勝目。新型コロナウイルスのため、アルプス席は野球部員とその家族らに限られたものの、地元からのエールを届けるかのように、精いっぱいの拍手でたたえた。2回戦は大会第8日の27日、第3試合(午後2時開始予定)で常総学院(茨城)と対戦する。【酒井志帆、隈元悠太】 互いに得点を許さず、六回までスコアボードにゼロが並んだ。緊迫感すら漂う中、先発でマウンドに立つのはエース、畔柳亨丞投手(3年)。スタンドの父貴宏さん(49)が「球速よりも勝てるピッチングを」と祈るような表情で見守った。140キロ台の力強い投球は保ったままで、得点を許さない。 スタンドでは、野球部員たちがスクールカラーの一つ、青色のメガホンを手に応援。昨年、センバツに選出されながら新型コロナウイルスによる大会中止に見舞われた前チームの先輩、保護者らが息を詰めて見守った。 原尚輝主将(同)の兄拓也さん(20)は「思い切ったプレーができていないのか、相手の方が元気がある。まずは塁に出て」と心配そうに話した。 そんな均衡が破れたのは七回裏。大会直前にベンチ入りした櫛田理貴(3年)が途中出場で、ランニング本塁打。公式戦初打席の一打だった。「やったー」と歓喜に沸き立つスタンド。母舞さん(47)は「やれるだけのことはやって来ると気合が入っていた。みんなの役に立てて良かった」と目を潤ませた。試合後、高橋源一郎監督も櫛田を評し、「練習に取り組む姿勢の素晴らしさは周りも認めており、私も信じてみたいと思った」とたたえた。 その後は、「点をとってもらったからには絶対ゼロに抑える」と、畔柳投手が強い気持ちで腕を振り、12奪三振で完封に抑えた。 ◇3姉妹、兄を応援 ○…アルプス席では、桑垣秀野(3年)の下の3人姉妹がカラフルな雨具を着て、手拍子で応援。桑垣は5人きょうだいの長男。冴野さん(16)=写真<中>、結野さん(13)=同<右>、夢野さん(10)=同<左>=がそろって兄の活躍を見守った。夢野さんは兄に憧れ、兄と同じ少年野球チームに入った。「すごくかっこいい」と、甲子園でプレーする兄の姿を見つめ「ホームランを打って」と話していた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇次は期待に応えたい 桑垣秀野中堅手(3年) 「力みがあり、うまくバットが出てこなかった」。勝負強いバッティングが強みだが、初戦は緊張から持ち味が出せず、無安打に悔しさがにじんだ。四回に送りバントを成功させ好機を作った。しかし、自分なりのプレーはできなかった。 「3番打者の桑垣の攻撃がカギを握る」と、高橋監督がチームで最も期待を寄せる選手の一人だ。中学2年までは捕手で、1年先輩の同じチームだった高橋宏斗投手(中日入団)とバッテリーを組んだ。2019年優勝の明治神宮大会では、1年生ながら全試合に出場するなど、経験を積んできた。 毎朝5時起きで弁当を作り、最寄り駅まで送る両親に恩返しがしたいという。 周囲の期待がかかっているのは理解している。「次の試合では、気負わずに、自分のバッティングをやっていきたい」 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 専大松戸 000000000=0 00000020×=2 中京大中京