紅白のタブー?「長髪の男性は出られなかった」の噂は本当か
今年で71回目を迎える『NHK紅白歌合戦』。今なお日本全国から注目される大きな行事となっており、年末になると、誰が出場するのか、どの曲を歌うのかという話題が、芸能ニュースを賑わせている。そんな紅白歌合戦について、元NHKのアナウンサーで紅白の司会を務めたこともあるキャスター堀尾正明さん、昭和歌謡ライターで紅白ウオッチャーの田中稲さん、紅白歌合戦研究家で作家・音楽プロデューサーの合田道人さんが“紅白秘話”について語り合った。 【写真】堀尾正明さんと合田道人さんの紅白トークが盛り上がったシーン
合田:自分の曲ではなく、ほかの歌手の曲を歌ったケースもあるんです。代表的なのが、桜田淳子が『セーラー服と機関銃』を、榊原郁恵が『なごり雪』を歌った第33回(1982年)。 田中:覚えています! 当時から私は桜田淳子の大ファンで、この回が最後の紅白になったので、オリジナル曲じゃなかったことがすごく残念でした。どうして彼女は薬師丸ひろ子の曲を歌うことになったのか? 不思議で仕方なくて。 合田:あの年は歌謡界全体にヒット曲が出なかった年でね。その中で大ヒットしたのが『セーラー服~』。薬師丸さんが大学受験の勉強のためという理由で辞退したので、当時のNHKの歌番組『歌謡ホール』で歌い、好評だった淳子ちゃんが、女優や歌手の先輩として歌ったんですね。あの年は他人の曲でも、“歌いたい歌を”というアンケートがとられ、牧村三枝子さんは渡哲也さんの『くちなしの花』を真っ白いドレス姿で歌いましたね。 田中:なるほど。長年の謎が解けました、まさに生き字引(笑い)。ありがとうございます。 合田:そういえば、紅白のタブーとして、まことしやかに囁かれてきたのが「グループサウンズ(以下、GS)は長髪だから紅白に出られない」というウワサでしょうか。
堀尾:そうですね。日本レコード大賞を取ったブルーコメッツは、ちゃんとネクタイをして髪も短いから、紅白に出られたといわれていましたね。 合田:理由として「男のくせに髪が長い」とか「ヒッピーみたいな格好をするな」っていう風潮がありましたしね。しかし、本を書くために関係者に取材してみると真相はちょっと違っていたんです。 実は当時、ザ・タイガースのNHK出演が内定していたんですが、放送直前に野外コンサートで観客が将棋倒しになり、多数の負傷者が出てしまった。この影響で『歌のグランド・ショー』(NHK)で収録済みだったザ・タイガースの出演部分がカットされ、内定していた紅白出場も見送られたのが真相です。 堀尾:つまり、長髪が原因ではなかったんですね! マチャアキ(堺正章)さんが言ってましたよ。「昔は髪が長くて紅白落とされたけど、いまはおれを撮っているカメラマンの髪が長い!」って(笑い)。 合田:堺さんにせよ、沢田研二さんにせよ、ソロになって紅白に初出場したときも髪は長かったんですよね。たった3~4年で時代がポンと変わったんです。 【プロフィール】 堀尾正明/キャスター。1955年生まれ、65才。埼玉県出身。1981年にNHK入局。2008年にNHK退職後はフリーアナウンサーとして『誰だって波瀾爆笑』(日本テレビ系)などで活躍。 田中稲/昭和歌謡ライター。1969年生まれ、51才。大阪府出身。大阪を拠点に昭和歌謡や懐かしブームなどのライターで紅白ウオッチャー。CREA WEBにて『田中稲の勝手に再ブーム』連載中。 合田道人/作家・音楽プロデューサー。1961年生まれ、59才。北海道出身。歌手・作家・構成作家で、日本歌手協会理事長。紅白歌合戦研究家で『紅白歌合戦ウラ話』(全音楽譜出版社)など著書多数。 撮影/浅野剛 ※女性セブン2021年1月7・14日号