個別株投資で500万円がパァ!コロナ相場の誘惑に負けた会社員の後悔
● 長期分散投資で難関となる 「やり過ごす時期」とは 将来の資産形成において、どのように投資をしたらいいのか相談を受けることがよくあります。その際、投資経験が少ない初心者の方に対しては、インデックスファンドでの長期分散投資から始めてみては、とお勧めしています。 しかし最近、少し投資に慣れてきたからなのか、株式相場が好調だからなのか、長期分散投資だけだと「つまらない」と感じている人が増えているように思います。昨年のちょうど今頃に起こったコロナショックにより株価が乱高下した時に、うまく含み益を出すことができた人などは特にその傾向が強いようです。 長期分散投資では、いくら複利であるといっても、当然ながらはじめの数年は増え方が少ないものです。時間がたてばたつほど利益が膨らんでいく仕組みですから、あまり増えない時期を「やり過ごす」必要があります。しかし、始めた頃はそうした仕組みを理解していても、それをいつの間にか忘れてしまうのです。 一度、個別株などで利益を得る経験をすると、その「なかなか増えない時期」が妙につまらなく、刺激がないと感じてしまうのでしょう。この「やり過ごす時期」が、投資信託を積み立てる際の最初の難関であるといっても過言ではないと思います。
● コロナ禍で個別株に手を出し 500万円が吹き飛んだ! 10年ほど前に、家計改善のためにしばらく相談に来ていた会社員のZさん(当時46歳)は、時間をかけて家計を見直し、コツコツと貯金を続けてきました。家計の状況が改善されたため、しばらくはご自分で資産形成に取り組んでいました。そうした中で約4年前、遺産を相続して急に蓄えが増えたため、投資を始めてみたい、と言って投資の勉強をしに再度私のところにいらっしゃいました。 当時はiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象者が拡大して1年ほどたった頃で、長期分散投資が徐々に注目されてきていました。Zさんは、その波に乗りたい気持ちがあったのかもしれません。初心者に向いている長期・分散・積み立て投資のメリット、デメリットを学び、投資を始めました。始めたのは、インデックスファンドでの積み立て投資。 Zさんは、最初の数年は急激には資産が増えないこと、継続して投資をすることで時間とともにその増え幅が大きくなる可能性が高いことについてはしっかり分かっていたと思います。一方で、老後資金を作ることを目標にしていたものの、iDeCoだと急にお金を引き出せなくなるのが不安ということで、課税口座を利用しながら取り組んでいました。 投資を開始した後、Zさんからはしばらく連絡がなかったのですが、最近になって「増えた分がなくなった」と連絡をいただき、改めて家計と投資のご相談に来られました。 話を聞くと、しばらくは長期分散投資を続けていたのですが、コロナ禍での株価の乱高下具合を見て、もう少し利益を出せる方法があるのではないかと思い、個別株への投資を始めたとのこと。 実際、2500万円ほどの資産額に対して400万円ほどの含み益が出て、一気に2900万円ほどに増えたのだそうです。それから個別株に興味が強くなり、ゲーム会社や自動車会社などの大手企業の株に投資するようになりました。 それでも最初は値動きが怖くて数十万円でやっていたのですが、次第に投資額が100万円以上になることも珍しくなくなり、家計相談の直前には1銘柄に1000万円以上を投資するまでになっていました。投資している金額が大きいので、少し増えると10万~100万円程度の含み益が出るのが面白かった、とZさん。 しかし、次第に株価が下がるようになり、下がったところからなかなか株価が戻らないため、これ以上下がる前にと、適当に損切りする……こんなことを5~6回繰り返しているうちに、2900万円ほどあったはずの資産は、積み立ての利益を吹き飛ばし、2400万円を切ろうかという金額に減ってしまっていたのです。