59歳会社員「退職金はありません、定年後の住宅ローンが不安です…」【月間ヒット記事】
Aさんが下した決断は意外にも…
実は、筆者がまず助言したことは、住宅ローンの金利引き下げ交渉でした。他の金融機関で借り換えの審査をパスしたら、そのエビデンスを持って借入れ中の金融機関に金利引き下げを交渉するのです。手間はかかりますが、ノーコストですからトライする価値はあると思ったのですが、Aさんの考えは異なりました。 現在の住まいである戸建からマンションへの買い替えを検討しているというのです。理由はいくつかあるのですが、まず、買い替えて毎月の住宅ローンの返済額を減額したいこと、子供達は独立しており現在の戸建ては夫婦2人には広すぎること、戸建の修繕予定が近づいているのでこれから出費がかさむであろうこと、多発する自然災害にはマンションの方が安心できること、などです。 理由を聞くと、確かに妥当といえます。ただし、買い替え時には注意点がいくつかあります。今回のAさんのケースで重視して欲しい点に絞り、次の助言をしました。 ・購入予算と諸費用について 戸建の売却益の見込みは600万円ほどということですが、売却と購入時に不動産会社への仲介手数料や税金、登記に係る費用などが諸々かかります。また、買い先行の場合は二重ローンとなる可能性があり、売り先行の場合は仮住まいが必要になる可能性がありますから、諸費用に加えスケジュール管理も重要です。 ・修繕計画について マンション暮らしは管理費と修繕積立金を毎月支払うことになります。特に、大規模修繕に備えている積立金が不足すると、足りない費用に対して一時金負担や修繕積立金の値上げなどが予想されます。修繕計画ならびに今後の値上げ予定について確認しておくべきです。 以上を留意した結果、マンションの購入予算を下げて再度検討しようという結論に至りました。Aさんの計画では、住宅ローンを新たに借り入れる予定でしたが、変動金利の場合、直近の借入れ金利は低いものの今後上がっていく可能性は見逃せません。その際、繰上げ返済できるくらい家計に余裕がないとオススメできません。なんとか行けると踏んでいたAさんでしたが、ここは安全第一に考えましょう、と納得していただきました。 金利やマンションの修繕積立金は自分でコントロールできないものです。自分でコントロールできる購入予算やローンの借入金については、妥協せずに安心できる決断をしたいものです。
三原由紀(プレ定年専門ファイナンシャルプランナー)