「呪術」で富と名声を得るために…アフリカで「アルビノ」の誘拐が相次ぐ「むごすぎる事実」
アフリカのサハラ砂漠以南では、「アルビノ」の獲得を目的とする誘拐や殺人事件が増加傾向にある。アルビノの肉体を使って呪術の儀式を行なえば、富と名声を得られるとの俗信があるためだ。 【写真】怨念、性愛、神話が入り混じる「呪術」の世界をもっと読む アフリカの「アルビノ」に関係する犯罪は惨(むご)いとしか言いようがないが、医師の是対数が足りないインドの東部ではオジャと呼ばれる呪術(じゅじゅつ)医が頼られていて、いまだにこの地域では近世ヨーロッパを彷彿(ほうふつ)させる「魔女狩り」が横行しており、その犠牲者の数は毎年100人以上になるという。 アフリカの「アルビノ」とインドの「魔女狩り」について歴史作家・島崎晋氏が詳しく解説する。 ※本記事は、『呪術の世界史―神秘の古代から驚愕の現代』より一部を抜粋編集したものです
アルビノの肉体を、高値で…
世界の一部地域では、マイノリティーがマイノリティーという理由だけで迫害を被り、死者が出ることも珍しくはない。 目障りだから殺す。生意気だから殺す。殺したいから殺す。理由はどうあれ、殺人が目的化していることは間違いない。 だが、アフリカのサハラ砂漠以南では、これとは性格を異にする誘拐や殺人が増加傾向にある。被害者は「アルビノ」で、犯人たちの目的はアルビノの肉体をカットし、高値で売りつけることにある。 アルビノは病気の一つで、日本の医学界では先天性色素欠乏症と呼ばれる。生まれつき肌や髪の毛の色を構成するメラニン色素が少ないため、全身の肌が白く、日焼けだけでも命取りになりかねない。2万人に1人の確率で生まれることから、日本でも国の難病に指定されている。 白人の世界に生まれる分にはあまり目立たないが、肌色が濃い黒色ばかりの人の多いサハラ砂漠以南のアフリカでは嫌でも目立つ。目立つだけならまだしも、アルビノの肉体を使って呪術の儀式を行なえば、富と名声を得られるとの俗信は、笑って済ませられるものではなかった。
子供たちまでもが犠牲に
参考までに、パリに本拠地を構えるAFP(フランス通信社)がここ数年に報じたアルビノに関する記事の見出しを並べておこう。AFPは世界三大通信社の一つで、世界最古の通信社でもある。 「アルビノの5歳児、頭部と両脚のない遺体で発見 呪術目的か コンゴ」(2023年2月3日) 「アルビノの子供3人の売却計画、父親とおじ逮捕 モザンビーク」(2022年7月27日) 「アルビノ男性殺人事件、カトリック司祭に禁錮30年 マラウィ」(2022年6月28日) 「コロナ禍でアルビノの殺人増加 国連報告書」(2021年7月31日) コンゴ民主共和国の事件はルワンダおよびブルンジと国境を接する南キブ州で起きたもので、同国のアルビノ支援団体によると、同州内では2009年以降、同様の状態で遺体となって発見されたアルビノが18人に上り、それ以外にもアルビノの墓10基が荒らされ、アルビノの誘拐未遂も22件確認されているという。 モザンビークの事件では、父親とおじが9歳から16歳の子供3人を隣国のマラウィに連れていき、約4万ドル(約600万円)で売る計画を立てたとされ、マラウィの殺人事件で逮捕された司祭には禁固30年の有罪判決が下された。 国連の報告書はこの3つの事件より前に発表されたものだが、同じ記事のなかで、アルビノの人権状況に関する国連の独立専門家が、事件の増加に関して、「コロナ禍で貧困に陥った人の一部が手っ取り早く金をもうけようと呪術に頼ったため」「さらに悲劇的なことに、被害者の大半は子供たちだ」と指摘しており、事件の背後に潜む闇が途方もない深さであることを感じさせる。