仏頂面がそっくり。朝ドラ『おむすび』50歳俳優と“名優である父親”の2つの共通点
仏頂面が激似!
北村和夫が演じる島田大心は、主人公・古波蔵恵里(国仲涼子)が上京した引っ越し先の隣人。恵里があいさつ回りで島田の部屋のドアをノックする。島田は居留守を使っているのか。第30回、恵里が出直そうとしたところへ、ドアを開けた島田が隙間から顔をのぞかせる。 恵里はほとんど一人相撲で語りかける。それに対して島田は「なに」とぶっきらぼうに連呼するだけ。それ以外の場面でも「なに」しか言わない。「なになに」じいさんなのである。 島田の偏屈な性格設定とあいまって、北村和夫のその顔の仏頂面が北村有起哉と激似なのだ。さらに少しだけ開けたドアの隙間からのぞく顔が絶妙にフレーミングされる絵は、北村和夫もまた顔が画面の基礎となる俳優ということを端的に示しているのだろう。
くぐもったバリトン母音の響き
そりゃ父と息子なのだから、顔が似ているくらいは当たり前かもしれない。でも似ているのは、顔ばかりではない。ディープなバリトンボイスの息づかいと響きもほんとうによく似ている。 島田の台詞に傾聴してみる。恵里が「お一人なんですか?」と聞くと「えぇっ? あぁ、うん」とほぼ母音だけで答えている。バリトンボイスによる「え」と「あ」と「う」はくぐもっていながら、不思議とディープでクリアな響きになっている。 このくぐもったバリトン母音の響きは、『おむすび』の北村有起哉もはっきり共通している。特に第9週第41回、夕食場面で結の姉・米田歩(仲里依紗)に「歩にできんのか?」と聖人が聞くとき、「かぁ」と語尾が余韻豊かにくぐもったバリトン母音になっている。
俳優父子の共通点を連動させる楽しみ
北村有起哉と北村和夫は、それぞれ現在と過去の朝ドラに出演して、仏頂面が特徴的で画面の基礎になるような顔、さらにくぐもったバリトン母音の響きによって共鳴している。 『おむすび』と『ちゅらさん』の俳優父子の共通点をこうやって連動させて見る楽しみというのもあるんじゃないか。余談だが、井筒和幸監督の『のど自慢』(1999年)は、北村有起哉と北村和夫の名前が並ぶクレジット共演作である。 ふたりが同じ画面上を共有しているわけではないのだけれど、おじいさん役の北村和夫が作品タイトルになっているのど自慢大会で、バリトンボイスの喉を鳴らす歌唱場面が大団円として描かれている。 同作での共演を起点として、俳優である息子へとディープな声の魅力が受け継がれている。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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