新時代に突入した日本男子100m。18歳サニブラウンの強さと可能性とは
山縣と桐生は3月11日に豪州で行われたサマー・オブ・アスレティクスGPに参戦して、山縣が10秒06(+1.3)、桐生が10秒04(+1.4)という好タイムで走っている。その後、山縣は足首を痛めて、桐生は連戦続きで、日本選手権にうまくピークを合わせることができなかった。一方のサニブラウンは徐々に調子を上げており、日本選手権ではなく、その先のロンドン世界選手権にピークを合わせるように仕上げている。その“差”が明暗をわけたのかもしれない。 北京五輪(2008年)男子4×100mリレーの銅メダリスト(後に銀メダルに繰り上げ)である高平慎士(富士通)は、サニブラウンの強さについて、「エンジンが違いますよね。お尻がすごく大きくなっていますし、海外で積み重ねてきたものがカラダにあらわれていると感じます。正直、2位以下は雨のなかで走ったかなというタイムですが、サニブラウンは関係なかった。10秒0台を3連発。その間に200m予選を挟んでいますから、本当に強い。今回の日本選手権は誰が勝つのか、多くのファンが注目していました。でも、誰かが勝ち続けることで、横綱になっていく可能性があります。日本陸上界のためには切磋琢磨して、皆で高めていく方がいいんでしょうけど、サニブラウンの時代が来てしまうような気がします」と表現した。 ニュースターの登場で日本人の100mでの9秒台はさらに近づいたことは間違いない。9秒台の可能性については、「出るときには出ると思います」と答えたサニブラウン。 ロンドン世界選手権ではウサイン・ボルト(ジャマイカ)やジャスティン・ガトリン(米国)ら世界の強豪が待っているが、「背中を追いかけるのではなく、横に並んで走りたい」と話す。2020年東京五輪のメダルを本気で目指している男にとって、100m9秒台というタイムは通過点でしかない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)