「現役最強ショート」は誰か。守備の名手・井端弘和がそのすごさも語る
井端弘和「イバらの道の野球論」(16) 野球の内野守備におけるショートは、「花形」とも称される重要なポジション。これまで数々の名選手が生まれてきたが、現役の最強ショートは誰になるのか。現中日の一軍内野守備走塁コーチ、荒木雅博との「アライバ」コンビで華麗な守備を披露し続けた、球史に残る名ショート・井端弘和に選定してもらった。 ◆2000本安打を達成した坂本。左利きが生んだ高度な打撃技術>> ――現役の最強ショートを選ぶということで、まずはセ・リーグからお願いします。 「セ・リーグでは、2000本安打を達成したばかりの巨人の坂本(勇人)を真っ先に挙げざるを得ません。近年は少しケガが多く、今シーズンは開幕当初こそ不調に苦しみましたが、まだ31歳なのにもうすぐ一軍1800試合出場を達成するという点も加味しないといけませんね」 ――他の選手と比べると蓄積されてきた疲労度が違いそうですね。 「一軍でずっと活躍している選手でも、同じくらいの試合数に達するのは35歳を超えたくらいでしょうか。坂本は高卒1年目から一軍の試合に出て、2年目にはショートのレギュラーを確保して攻守の要になった。そこを考えずに成績や動きが"落ちた"と言うのは違うと思います」 ――ちなみに、2014年に井端さんが坂本選手に譲った、通称"井端グラブ"は昨年に役目を終えました。 「それを聞いて今年にふたつ、新しいグラブを持っていきました。今使っているのかは確認していないんですけど、また彼の助けになっていたらいいですね」
――セ・リーグでは、中日の京田陽太選手も守備面で高く評価されていますが......。 「トータルで考えると、まだまだ及びません。坂本は昨シーズンに3割40本を達成したように打撃面でも大きく貢献していますし、守備もプロ入り当初は不安があったのが、ゴールデングラブ賞を受賞するまでになった。あんなに力が抜けた感じでゴロを捌けるのはうらやましいですよ(笑)。 練習での動きを試合でもやっている感じです。それでエラーをすると『怠慢プレーだ』と批判されますが、僕らはあのプレーのすごさがよくわかります。身体能力に任せた守備を続けていると体がキツくなってくる。『これではいけない』と無駄を省く動きを身につけていって、試合でも体をうまくリラックスさせられるようになると、それが打撃にも生きてきます」 ――守備がうまくなると、打撃の成績も上がるということでしょうか。 「最適な体のバランスは、攻撃と守備に共通するものだと思っています。だからバッティングで感覚を掴むのが先の選手もいるでしょうね。例えば、ヤクルトの村上(宗隆)は今シーズンに打率を大きく上げましたが、力が入りすぎない体の動かし方を覚えてきたからだと思うので、課題とされている守備も徐々によくなっていくはず。そんな動きがプロ入り後すぐにできていたのは、西武の源田(壮亮)です」 ――ちょうど名前が出たので伺いますが、パ・リーグのショートは2年連続でゴールデングラブ賞を受賞している源田選手が頭ひとつ抜けている印象ですか? 「そうですね。源田はプロ4年目の27歳ですけど、すでに体をリラックスさせる重要さに気づき、試合で実行できているように見えます。打球を捌く時の負荷は、他の選手よりも少ないはず。彼は長く現役を続けられると思いますよ」