大学入試「データを正しく読む力」が試される背景 社会的課題のデータを使って議論する授業を
早い段階から周囲の情報を活用して自ら考える訓練が有効
例えば、折れ線グラフや棒グラフといった図のデータであれば、トレンドを把握したり、急に数値が変化するところに着目したりするとよいでしょう。数値を羅列する表のデータであれば、基準となる数値を100として考えることに慣れるとよいでしょう。 しかし、知識の詰め込みと違って、このような思考のスキルは一朝一夕には身につきません。訓練は早くから始めるに越したことはないでしょう。高等学校までの教育においても、その役割が期待されています。 社会的課題に関するデータを使って議論する授業はいかがでしょうか。筆者はアメリカのいくつかの大学で教えてきましたが、日本の学生には少し物足りなさを感じます。論理的に考えられるようにするためには、海外のように早い段階から周囲の情報を活用して自ら考える訓練が有効だと思います。 こうした訓練は一部の先進的な学校では取り入れられているようですが、すべての学校でとまではいかないようです。そこで、個人でできることとして、ニュースを見ながら、今示されたデータは本当にキャスターの主張を裏付けるものなのかと考えてみましょう。意外とそうでないこともあるかもしれません。 最後に、データを正しく読みこなす能力は入試だけでなく、その後の人生においても役に立つ能力です。情報があふれかえる現代社会でデータにだまされないためにも、多くの人に習熟していただきたいスキルだと考えています。 (注記のない写真:Graphs / PIXTA)
執筆:青山学院大学 国際政治経済学部 教授 友原章典・東洋経済education × ICT編集部