稲盛和夫がイラっときた中途ハンパ発言、部下に足りなかった「たった2文字」の能力とは?
経営の神様・稲盛和夫氏は、部下が中途半端なことを言えば容赦なく叱責した。稲盛氏が「知識」以上に大切にしたものとは?(イトモス研究所所長 小倉健一) ◇◇◇ ● 稲盛和夫は「ちょっと違う」 「話をすればするほど、『この人(稲盛和夫氏)はちょっと違う』と思わされました」 そう述べるのは、「経営の神様」と呼ばれた稲盛氏とともに、第二電電(DDI、現在のKDDI)を創業した小野寺正氏だ。PRESIDENT(2013年3月18日号)のインタビューで、小野寺氏は稲盛の印象を「ちょっと違う」と述べ、その理由を以下のように語っている。 《話をすればするほど、「この人はちょっと違う」と思わされました。構想を立てるときには、ものすごく幅広く考えている。さらに、われわれの意見をとてもよく聞いてくれるのです。社員の考えを汲み取ったうえで、自分の考えを仰る。とりわけ思考の深さが人並み外れています。だから中途半端なことをいえば、すごい勢いで叱られます。たびたび、「おまえの考え方がおかしい」といわれました》 (PRESIDENT、同号) かつて日本の通信事業は国が独占的に運営していたが、1985年に大きな変化が起きた。政府は電話料金を下げるために市場に競争を導入することを決め、「通信自由化」を推し進めた。 新しい会社が通信事業に参入できるようになったのだ。このとき、稲盛氏は、電電公社の課長補佐だった小野寺氏、同じく電電公社の千本倖生氏らとともに「第二電電(DDI)」を設立した。 稲盛氏の問題意識は「日本の電話料金が高すぎる」と強く感じていたことに始まる。
● 「電話料金が高すぎる」ケチケチ稲盛氏の本領発揮 稲盛氏がアメリカにある京セラのオフィスを訪れた際、社員が長電話をしているのを見て「電話代がかかりすぎているのでは?」と注意した(このあたり、ケチな性格で知られる稲盛氏のエピソードとしてありありと情景が浮かぶ)。 そこで稲盛氏は、アメリカの電話料金がとても安いことを知って驚く。日本では3分間の長距離電話(国内)が400円もすることに疑問を感じたのだった。 日本の電話事業を独占する電電公社が市場に競争を生まないから、料金が下がらないのだ。稲盛氏は「電話料金を下げなければ、日本の企業も国民も困ると考え、通信業界に競争原理を持ち込むことを決意した。 自分が儲かる儲からないではなく、あくまで、天下国家・国民・企業のために必要かどうかで事業を構想する。小野寺氏は、こうした稲盛氏の姿勢を「この人は、自分の損得で事業を始める人ではない」と述懐している。 その後、DDIは2000年に他の2社と合併し、現在のKDDIとなった。稲盛氏の行動は、損得よりも国民のために電話料金を下げたいという強い信念から始まったわけである。 稲盛氏はしばしば、小野寺氏を含む、DDI創業メンバーを叱咤激励した。小野寺氏によれば、稲盛氏からこんな風に叱られたこともあったという。