「世界に30頭」のトラが飼育員3名に襲いかかった悲壮な背景
’22年1月5日の朝8時半、栃木県那須町の那須サファリパークで飼育員3名がトラに襲われた。襲ったのは体長約2m、体重150㎏超を誇るオスのトラ「ボルタ」。世界に約3000頭いるベンガルトラの中でも珍しい変異種で、現在約30頭しか飼育されていない希少種だ。 【写真】事件当日の那須サファリパーク 「本来、ボルタは獣舎に入れられ、扉は施錠されています。飼育員が襲われたのは獣舎の外の通路でした。女性飼育員が開園準備をしていたところ、獣舎の外にいたボルタと遭遇。他2名が、彼女を助けるため後から駆け付けて襲われたとのことです。彼らは全身を嚙(か)まれ、頭部を骨折するなど大ケガを負った。うち一人は右手首を失っています」(全国紙記者) 同様の事故が起きるのは3回目だ。このような事態は想定されていなかったのだろうか。同園に勤める飼育員が当時の状況を明かす。 「飼育員は、猛獣が襲ってきたら麻酔銃で眠らせるよう訓練しています。ただ、今回は遭遇した際にトラとの距離が近く、出会い頭に襲われた。麻酔銃を取りに行く余裕がなかったようです」 同パークのアイドル虎だったボルタ。なぜ人慣れしたトラが飼育員を襲ったのか。トラなどの生態に詳しい『レップジャパン』の白輪(しらわ)剛史代表が考察する。 「本当に襲う気があったら一撃で致命傷を負わせています。普段直(じか)に触れ合うことのない人間と遭遇し、じゃれついたのではないでしょうか。相手は悲鳴を上げ、さらに続々と人間がやってきた。驚いて自己防衛のため嚙みつき、大ケガを負わせることになったのでは。ボルタの今後の処遇が気になりますが、支配人も『トラが悪いわけではない』と言っていますし、殺処分にはしないでしょう」 現在、栃木県警本部は那須塩原署と共同で捜査を進めている。 「同パークの飼育手順マニュアルでは、夜間にはトラを獣舎に入れ、それを目視確認するよう定めています。しかし、前日の担当者がそれを怠っていたようです。当局は業務上過失傷害の疑いで捜査しています」(前出・記者) 飼育員や罪なき動物たちのためにも、再発防止策の徹底が求められる。 「FRIDAY」2022年1月28日号より
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