<紡ぐ思い・センバツ2021北海>選手へのエール 野球部OB・94年2年生エース 岡崎光師さん(43) /北海道
◇感謝胸に校歌斉唱を 天地を包む雪の色 その寂寞(せきばく)の冬去りて 緑の大野見るごとく 暗(やみ)より明けし北海の 空光明のおとずれよ 「伝統校らしい大好きな校歌。甲子園では大きな声で歌った」。1994年の第76回全国高校野球選手権大会に2年生エースとして登板し、その右腕でチームに32年ぶりの8強を引き寄せた。 チームは守り勝つ野球を掲げていた。「特に内野陣は鉄壁。安心して投げることができた」。札幌地区大会と南北海道大会の計7試合はいずれも5得点以上と打撃陣も心強かった。 夏の甲子園初戦の相手は、優勝候補の一角だった宇和島東(愛媛)。「5点以内に抑えることができれば」とマウンドに上がった。しかし、経験したことのない蒸し暑さが襲い「球場を包み込む雰囲気にのまれた」。改めて試合のビデオを見返すと当時を思い出す。「試合中盤まで地に足が着いていなかった」。それでも被安打5、失点2で初戦突破に貢献した。 2回戦の相手は、北北海道代表の砂川北。史上初の道勢対決が実現した。甲子園の宿舎も同じで仲のいい選手もいたが、「練習試合でも打たれたことがなかった」。得意のカーブを中心に組み立て15奪三振。チームは8安打10得点で勝利した。 続く3回戦も16安打で14点を取り、小松島西(徳島)に快勝。この頃には、試合を楽しむ余裕も生まれていた。内野席を覆う銀傘(ぎんさん)に響くミットの音、金属バットの打球音に心地よさすら感じていた。 だが、準々決勝の佐賀商(佐賀)戦は「結果的に優勝するチームの勢いの前に屈した」。翌春もセンバツで甲子園のマウンドに立ち、学んだ。「初回にまずアウトを一つ取る。そうすることで波に乗ることができる」。甲子園で特に重要な点として、現役選手に伝えたい。 今月19日の開幕戦までに、現チームは約10試合の練習試合で最終調整を図る。実践を通じ、エース木村大成投手(2年)が「打者への対応力など、どこまで感覚をつかむことができるかが重要」と語る。 新型コロナウイルスの影響で2年ぶりの開催となったセンバツ。「コロナ禍でも野球ができることに感謝する気持ちを忘れないでほしい。それから、自分たちの力を発揮してほしい」とエールを送る。 「伝統を自信に変えてプレーした」。プレッシャーがかかる大舞台での経験を、こう振り返る岡崎さん。創部120年の節目で周囲の期待が高まる中、高らかに校歌を歌う選手たちを思い浮かべた。【三沢邦彦】=随時掲載